フリーランスエンジニアとして働き始めると、最初に必ず出てくるのが「業務委託契約」という言葉です。会社員のような雇用契約ではなく、クライアントと対等な立場で結ぶ契約形態ですが、初めての人にとっては「何が違うの?」「どこに注意すればいいの?」と疑問だらけではないでしょうか。
この記事では、フリーランスエンジニアを前提に、業務委託契約の基本と注意点をわかりやすく解説します。
1. 業務委託契約とは?
業務委託契約とは、クライアントから「仕事を依頼され、成果を提供する」ために結ぶ契約です。雇用契約のように「労働時間を会社に提供する」のではなく、成果や業務遂行そのものを契約の対象とします。
法律的には「請負契約」と「準委任契約」に分けられることが多いです。
- 請負契約:成果物を納品することがゴール(例:Webサイトを完成させる、アプリをリリースする)
- 準委任契約:業務の遂行がゴール(例:週3日常駐して開発支援をする、コードレビューや運用サポートをする)
フリーランスエンジニアの場合、実務では準委任契約が多いですが、開発物を納品する案件では請負契約になるケースもあります。
2. 雇用契約との違い
会社員として働く場合は「雇用契約」を結びます。これと業務委託契約の違いを整理すると、理解しやすくなります。
- 雇用契約
- 労働基準法が適用される
- 給与は時間や日数で発生
- 社会保険や有給休暇などの制度がある
- 指揮命令関係がある(上司の指示に従う必要がある)
- 業務委託契約
- 労働基準法は基本的に適用されない
- 報酬は成果や契約内容に基づく
- 社会保険・福利厚生は自分で対応する必要がある
- 指揮命令関係はなく、基本的に業務の進め方は自由
つまり、業務委託契約は「自由度が高い反面、自己責任も大きい契約」と言えます。
3. 契約書でチェックすべきポイント
業務委託契約では、契約書の内容がすべてです。口頭の約束や「言った・言わない」は通用しません。特にフリーランスエンジニアが注意すべき項目を整理します。
- 契約形態(請負か準委任か)
報酬発生の基準が変わります。請負だと納品が必須なのでリスクが高く、準委任だと作業時間で報酬が発生するため安定しやすいです。 - 報酬と支払いサイト
「いくらで、いつ支払われるか」は必ず確認しましょう。フリーランスでは「末締め翌月末払い」や「翌々月払い」が一般的ですが、遅すぎる場合はキャッシュフローが苦しくなります。 - 契約期間と更新条件
1か月更新、3か月更新など。更新の際に自動延長か、都度合意が必要かも確認が必要です。 - 成果物の権利(著作権・知的財産権)
コードや成果物の権利が誰に帰属するか。多くはクライアントに帰属しますが、ライブラリや共通部分の扱いは明記しておくと安心です。 - 秘密保持(NDA)
業務中に知り得た情報を漏らさないことを約束する条項。これはほぼ必ず入ります。 - 契約解除の条件
双方が契約を解除できる条件。突然の解除に備えて、報酬保証の有無も確認しておきましょう。
4. フリーランスエンジニアに多い契約パターン
実際に現場でよく見られる契約パターンを紹介します。
- 週3日常駐(準委任)
クライアントの開発チームに参加し、タスクをこなす形。スタートアップや大手企業で多い。安定報酬が見込める。 - リモート開発支援(準委任)
フルリモートで参加し、週20〜30時間を稼働。SlackやZoomでやり取りしながら進める。柔軟性が高い。 - アプリ制作(請負)
「要件定義→開発→納品」で報酬を受け取るパターン。納期や品質の責任が大きい分、報酬単価は高め。
5. トラブルを避けるために
業務委託契約では、以下のようなトラブルが起こりがちです。
- 納品物の範囲があいまいで追加作業を要求される
- 支払いが遅れる、またはされない
- 契約解除を一方的にされる
これを避けるには、契約書を細かく確認することと、不明点は必ず事前に質問することが重要です。特にフリーランス初心者は「言いにくいから」と流さず、納得できる形で契約することを徹底しましょう。
まとめ
フリーランスエンジニアにとって業務委託契約は避けて通れない基本の契約形態です。
- 成果物ベースか、業務遂行ベースかで「請負」と「準委任」に分かれる
- 雇用契約と違い、自由度が高いが自己責任も大きい
- 契約書では「報酬」「支払いサイト」「契約期間」「権利関係」「解除条件」を必ずチェック
- 実際には「準委任(時間ベース)」の契約が多い
- トラブルを避けるには、曖昧さを残さないことが大切
業務委託契約を理解することは、フリーランスとして自立する第一歩です。法律の専門家でなくても、基本を押さえておけば安心して案件に取り組めます。ぜひ自分の武器として、契約知識を身につけていきましょう。

