はじめに
フリーランスエンジニアとして独立し、エージェントを通じて案件を獲得すると、収入は会社員時代より増えるケースが多くあります。月60〜80万円の案件を受注できれば、年収ベースで800万円以上も現実的です。
しかし、喜んでばかりはいられません。会社員時代は給与から天引きされていた社会保険料(健康保険や厚生年金)の半分を会社が負担していましたが、フリーランスになると国民健康保険・国民年金を全額自分で負担する必要があります。
さらに、この負担額は「収入」だけでなく「家族構成」によっても大きく変わるのがポイントです。独身ならまだ軽い負担でも、結婚や子育て世帯になると一気に重くなることもあります。今回は、そのリアルな数字を見ていきましょう。
1. エージェント案件の収入イメージ
- 週5常駐案件:月60〜80万円(年収720〜960万円)
- 週3〜4案件:月40〜60万円(年収480〜720万円)
- 高スキル案件:月100万円超もあり
会社員の年収500万円台から独立して年収倍増する人も珍しくありません。
ただし、ここから「国保」「年金」「税金」が差し引かれるため、手取り感覚は想像以上に下がることを理解しておく必要があります。
2. 国民健康保険の仕組みと負担
国民健康保険料は前年の所得に応じて計算されます。計算要素は以下の通り。
- 所得割:所得に応じて課税
- 均等割:加入者1人あたり定額
- 平等割:世帯ごとに定額
例えば東京都23区を例にすると、年収600万円で年間40〜50万円程度の負担。月額にすると3〜4万円です。
3. 国民年金の仕組みと負担
国民年金(基礎年金)は定額制で、所得に関係なく全員同じです。
- 2025年度:月額16,980円(年間約20万円)
厚生年金と違い、将来の受給額は少なく、満額でも月約65,000円程度。夫婦でフリーランスなら二人分の国民年金を払う必要があります。
4. 家族構成別のリアルな負担シミュレーション
ここで、年収600万円のフリーランスエンジニアを想定し、家族構成ごとの国保+国民年金の負担額を見てみましょう(東京都の平均的なケース)。
| 世帯構成 | 国保(年額) | 年金(年額) | 合計負担 | 月額目安 |
|---|---|---|---|---|
| 独身(本人のみ) | 約45万円 | 約20万円 | 約65万円 | 約5.4万円 |
| 夫婦(配偶者は専業) | 約50万円 | 約40万円 | 約90万円 | 約7.5万円 |
| 夫婦+子1人 | 約55万円 | 約40万円 | 約95万円 | 約7.9万円 |
| 夫婦+子2人 | 約60万円 | 約40万円 | 約100万円 | 約8.3万円 |
※子どもも国保の均等割にカウントされるため負担増。ただし自治体によっては「18歳未満の均等割を軽減」する制度あり。
5. 会社員との違い
会社員の場合は、健康保険・厚生年金の保険料を会社と折半します。さらに厚生年金は将来の受給額も大きい。
フリーランスの場合は:
- 保険料は全額自己負担
- 将来の年金は国民年金のみ
- 家族が増えるほど国保の負担が重い
つまり「見かけ上は収入が増えても、手取りや将来の保障は会社員より不利」になるケースもあるのです。
6. 負担を軽減する方法
(1) 経費を正しく計上
国保は「所得」に基づくので、経費計上を徹底すれば負担を抑えられます。
- PC・モニター・ソフトウェア
- 書籍・セミナー受講料
- 通信費・コワーキング代
(2) iDeCo・小規模企業共済を活用
掛金が全額所得控除になり、国保・税金の負担を減らせます。老後資金の準備にもなるので一石二鳥。
(3) 自治体の軽減制度を確認
子育て世帯向けに均等割を減免してくれる自治体も多いです。自治体のHPをチェックする価値あり。
7. リアルな感覚
私自身、独身時代は「月5万円くらいか」と思っていましたが、結婚して子どもが生まれると国保+年金で月8万円近くになりました。
収入が上がっても、家族が増えると「固定費としての社会保険料」が重くのしかかります。だからこそ、フリーランスは税金・保険料を戦略的に最適化する意識が欠かせません。
まとめ
- エージェント案件は高収入だが、国保・年金の負担は軽くない
- 独身:約65万円/年、夫婦:約90万円/年、子持ち世帯では100万円超もあり得る
- 会社員は会社負担があるが、フリーランスは全額自己負担
- 経費計上・iDeCo・共済・自治体軽減制度を駆使して最適化する
👉 フリーランスは「収入が増える=自由に使えるお金が増える」ではありません。社会保険・年金を理解し、先を見据えた対策を打てるかどうかが生き残りのカギです。

