はじめに
フリーランスとして働くメリットの一つに「自由度の高さ」があります。仕事量を調整しやすく、リモートワークが中心であれば家庭との両立もしやすいでしょう。
しかし一方で、結婚や出産といったライフイベントに直面すると、「収入の安定が不安」「社会保険はどうなるの?」「育児と仕事を両立できるのか?」といった悩みが浮かび上がります。
会社員ならある程度整った制度に守られていますが、フリーランスはすべて自己責任。だからこそ、ライフイベントを迎える前に準備しておくことが大切です。
本記事では、フリーランスが結婚・出産を経験する際に押さえておきたいポイントと、両立の工夫を解説します。
1. 結婚とフリーランス:知っておくべきこと
(1) 配偶者控除・扶養の仕組み
フリーランスは会社員と違い、健康保険や年金で「配偶者扶養」の仕組みがありません。夫婦ともにフリーランスなら、それぞれ国民健康保険・国民年金に加入し、保険料を負担する必要があります。
ただし、所得税には「配偶者控除」や「配偶者特別控除」があります。例えば、パートナーの所得が一定以下であれば、扶養している側の所得税が軽減されます。結婚したら税制上のメリットが出るか確認しておきましょう。
(2) 生活費の安定化
結婚生活では、自分一人分の生活費ではなく「家庭全体の収支」を考える必要があります。フリーランスの収入は変動しやすいため、以下の工夫が有効です。
- 契約を複数持ち、収入源を分散する
- 生活費半年分を貯蓄しておく
- 保険や共済でリスクに備える
フリーランスの自由度は魅力ですが、家庭を持つ以上「安定」も求められることを意識しましょう。
2. 出産とフリーランス:制度と準備
(1) 出産に関する給付金はある?
会社員なら「出産手当金」「育児休業給付金」などがありますが、フリーランスには基本的にありません。
ただし、**国民健康保険に加入していれば「出産育児一時金(原則42万円)」**を受け取ることができます。出産にかかる費用をカバーできるので、加入している自治体に確認しましょう。
(2) 出産前後の働き方
妊娠・出産に伴って稼働時間を減らす必要が出てきます。
- クライアントへ早めにスケジュールを共有する
- 納品ベースの案件や短期案件に切り替える
- 出産前にある程度資金を確保しておく
出産は想定以上に体力を使うため、「産後すぐに仕事再開」は現実的ではありません。最低でも数か月の無収入期間を見越して貯金しておくのが安心です。
3. 育児とフリーランス:両立の工夫
(1) 時間の使い方を工夫する
子育て中は、まとまった作業時間を確保するのが難しくなります。
- 子どもの昼寝や就寝後に作業
- 早朝時間を活用
- 短時間で完結できるタスクに分解
時間のコントロールが利くのはフリーランスの強み。柔軟に働き方を設計しましょう。
(2) 仕事をセーブする選択肢も持つ
育児の負担が大きい時期は、あえて案件数を減らすことも大切です。無理に仕事を詰め込むと、家庭と仕事の両方が中途半端になり、結果的に信頼を損なうことにもつながります。
「今は仕事量を減らして家庭に注力する」と割り切ることで、長期的に安定したフリーランスキャリアを築けます。
(3) 外部サービスを活用する
- ベビーシッターや一時保育サービス
- 家事代行サービス
- 在宅ワークに理解のあるクライアント
すべてを自分で抱え込む必要はありません。外部の力を借りながら両立するのも立派な選択です。
4. ライフイベントに備えるお金の知識
(1) 保険・共済を見直す
フリーランスは会社員のような福利厚生がないため、民間の保険や共済が大きな支えになります。特に、医療保険や所得補償保険、小規模企業共済は検討しておきましょう。
(2) 学資や住宅ローンの現実
結婚や子どもができると、教育資金や住居費も視野に入ります。フリーランスでも住宅ローンは組めますが、会社員より審査が厳しいのが実情です。2〜3年分の確定申告書を準備し、安定した収入を示せるようにしましょう。
5. 結婚・出産を経て感じるフリーランスの強み
- 時間の柔軟性:子育てや家庭の事情に合わせて調整可能
- 場所に縛られない:在宅で育児と両立しやすい
- 収入の上限がない:スキルを伸ばせば将来の収入アップも期待できる
制度面では会社員に劣りますが、ライフイベントを柔軟に乗り越えられるのはフリーランスならではの強みです。
まとめ
フリーランスにとって、結婚や出産は大きなライフイベントであると同時に、働き方を見直すタイミングでもあります。
- 結婚では「配偶者控除」や「生活費の安定化」を意識
- 出産では「出産育児一時金」と「貯蓄の確保」が必須
- 育児期は「時間の工夫」「仕事量調整」「外部サービス活用」で両立
- 将来に備え「保険・共済・住宅ローン対策」を早めに準備
👉 フリーランスは制度に守られないぶん、自分で備える力が求められます。ですが逆に言えば、自分でライフスタイルをデザインできる強みもあります。
結婚・出産をきっかけに「自由と責任のバランス」を見直し、自分らしいキャリアを築いていきましょう。

