インボイス未登録だと案件は受けられない?

⚖️ 法務・税務編

はじめに

2023年10月から始まった「インボイス制度」。フリーランスとして活動していると、「インボイス登録していないと案件が取れないのでは?」という声をよく耳にします。
特にエージェント経由の案件や法人クライアントとの契約では、この問題がよりシビアに感じられるはずです。

では実際に、インボイス未登録だと本当に案件を受けられないのでしょうか?この記事では、制度の基本を押さえつつ、フリーランスエンジニアの立場から実務的に解説していきます。


1. インボイス制度の基本をおさらい

インボイス制度(適格請求書等保存方式)は、消費税の仕入税額控除に関する新しい仕組みです。

  • **登録事業者(インボイス発行事業者)**は、適格請求書(インボイス)を発行できる
  • 取引先(クライアント)は、インボイスがないと支払った消費税を仕入税額控除できない

つまり、インボイスを発行できるかどうかは、取引先の税務処理に直結するため、フリーランスにとっても無関係ではありません。


2. インボイス未登録でも案件は受けられるのか?

結論から言えば、未登録でも案件は受注できます。ただし状況によっては制約や不利な条件がつくことがあります。

2-1. 受けられるケース

  • 免税事業者との契約が前提の場合
    取引先が「消費税を控除できなくても問題ない」と判断すれば契約可能。
  • フリーランスが個人相手にサービスを提供する場合
    たとえば個人向けアプリ開発やレッスンなどでは、クライアント側が仕入税額控除を気にしないため、未登録でも影響はほとんどありません。
  • 中小企業やスタートアップで柔軟に対応してくれる場合
    「登録していないから取引不可」とはせず、報酬条件を調整するケースもあります。

2-2. 受けにくくなるケース

  • エージェント経由の案件
    エージェントは法人であり、取引規模も大きいため「インボイス登録必須」としていることが増えています。
  • 大手企業との直接契約
    上場企業や大手SIerは社内規定が厳しく、未登録のフリーランスとの契約を避ける傾向が強いです。
  • 長期・高額案件
    契約金額が大きいほど、取引先にとって仕入税額控除の影響が重くなるため、登録者を優先する動きが出ています。

3. 未登録のまま働く場合のリスク

未登録でも働けるとはいえ、いくつかのリスクを理解しておく必要があります。

  • 案件選択肢が狭まる
    特にエージェント案件や大手クライアント案件を狙う場合、未登録だと門前払いの可能性あり。
  • 報酬が下がる可能性
    「仕入税額控除ができない分、消費税分を報酬から差し引かれる」というケースがあります。
  • 長期的に信用を失う可能性
    他の候補者が登録済みなら、クライアントはリスクの少ない相手を選びやすい。

4. インボイス登録のメリットとデメリット

メリット

  • 大手企業やエージェント案件に参画しやすい
  • 契約条件で不利になりにくい
  • クライアントから「安心して取引できる相手」と見なされる

デメリット

  • 消費税の納税義務が発生(免税事業者でいられなくなる)
  • 事務作業が増える(会計処理・納税管理)
  • 年商が小さい場合、納税額が負担になることも

5. 実務的な判断基準

では、フリーランスエンジニアはどう判断すべきでしょうか?

  • 年商1,000万円未満で個人相手の仕事が多い人
    → 無理に登録する必要はない。案件選択肢が十分にあるなら未登録でもOK。
  • エージェント案件や法人クライアントとの契約がメインの人
    → 登録した方が有利。特に大手案件を狙うなら実質必須。
  • これから売上を伸ばしていきたい人
    → 将来を見据えて早めに登録しておくと安心。

6. 登録しない場合の工夫

どうしても未登録で続けたい場合は、以下の工夫が有効です。

  • 請求書に「消費税はいただきません」と明記する
  • 報酬単価を下げないよう交渉で付加価値をアピールする
  • インボイス不要のクライアント(個人、小規模事業者)をターゲットにする
  • 海外クライアント案件を狙う(インボイス制度は国内取引限定)

まとめ

「インボイス未登録だと案件は受けられないのか?」という問いへの答えは、**「受けられる。ただし条件が不利になりやすい」**です。

  • 個人相手や小規模クライアントなら未登録でも問題なし
  • 法人案件、特にエージェントや大手企業案件では登録がほぼ必須
  • 未登録だと案件選択肢が狭まり、報酬面で不利になる可能性あり

フリーランスとしてどのような案件を軸に活動するかによって判断は変わります。
短期的な納税負担だけでなく、長期的なキャリアと案件の選択肢を考慮して決めるのが賢明です。

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