はじめに
ChatGPTやClaude、Geminiといった生成AIの進化は、エンジニアの仕事を大きく変えつつあります。
「コード生成がここまでできるなら、エンジニアの価値は下がるのでは?」
「特にフリーランスは単価が下落してしまうのでは?」
そんな不安を抱く人は少なくないでしょう。
私自身、フリーランスエンジニアとして活動しながらAIを日常的に活用しています。その中で実感するのは、単価は一律に下がるわけではなく、“二極化”するということです。この記事では、どのようなスキルが値崩れし、どんなエンジニアが逆に高単価を維持・向上できるのかを整理してみます。
単価が下がる領域:AIが得意な作業
まず、AIによって価格が下落しやすい領域を見てみましょう。
1. 単純なコード実装
CRUD処理、ライブラリの組み込み、API連携などはAIが高速に生成できます。クライアントも「AIでできるのに、なぜ高い報酬を払うのか?」と考えるようになり、この分野に依存したフリーランスは厳しくなっていきます。
2. 教科書的なアルゴリズム実装
ソートや探索といった基礎的アルゴリズムは、AIに任せれば即座に実装可能です。暗記的な知識や“コードを書けるだけ”のスキルは市場価値が低下するでしょう。
3. 機械的なテストケース作成
仕様に沿って網羅的なテストを作る作業はAIが得意です。自動生成ツールも急速に進化しており、人間がすべてを手作業で行う時代は終わりつつあります。
4. 定型的なドキュメント作成
関数説明や基本設計書などの定型文は、AIで十分生成可能です。「説明を書ける」だけでは差別化にならなくなります。
→ まとめると、“作業工数=価値”とされていた部分は単価下落が避けられないということです。
単価が維持・上昇する領域:人間にしかできない仕事
一方で、AIが不得意な領域は依然として価値があります。むしろここに集中することで、単価は上がる可能性すらあります。
1. 問題定義と要件整理
「そもそも何を作るべきか」を決めるのは人間の役割です。クライアントの曖昧な要望を整理し、具体的な要件に落とし込める力はAIでは代替できません。
2. 全体設計とアーキテクチャ選定
AIは部分最適は得意でも、非機能要件(セキュリティ・コスト・運用性)を含めた全体設計には弱いです。責任を伴う大局的な設計力を持つ人材は、単価を維持しやすいでしょう。
3. クライアントとのコミュニケーションと調整
要望を引き出し、関係者と調整し、信頼を築く力はフリーランスに特に求められます。人間的なコミュニケーション能力はむしろ重要性が増しています。
4. 創造的な発想とUX設計
ユーザー体験を意識したサービス設計や、新しい価値を生み出す発想はAIが苦手とする部分です。クリエイティブなスキルを磨けば、高付加価値を提供できます。
5. 責任を持って成果を出す力
最終的に納期や品質に責任を取るのは人間です。AIは提案や生成はできますが、結果に対して責任を負えません。「プロとしての信頼性」そのものが市場価値になります。
単価を左右する決定的な要素:AIを使いこなせるか
AIを「脅威」と見るか「武器」と見るかで、単価は大きく変わります。
- AIで初稿を作成 → 人間がブラッシュアップして品質を保証
- AIでテストを自動生成 → 人間がエッジケースを補う
- AIでドキュメントを作成 → 人間がクライアント向けに最適化する
こうした流れを組める人は、生産性を高めつつ付加価値を提供できます。結果として「この人に頼めば安心」と評価され、単価を維持・向上できるのです。
希少性のあるスキルは依然として高単価
最後に、AIだけでは補えない「専門性」の例を挙げておきます。
- セキュリティ要件が厳しい金融・医療系システム
- レガシー環境との統合知識
- クラウドやインフラ設計・運用のノウハウ
- 特定業界の業務知識(物流・製造・教育など)
専門知識 × AI活用力を持つ人材は、単価を下げずに戦えるでしょう。
まとめ
「AIでフリーランスエンジニアの単価は下がるのか?」
答えは 「一律に下がるわけではなく、二極化する」 です。
- 単純作業に依存している人は単価が下がる
- 上流工程・コミュニケーション・創造力を発揮できる人は単価を維持・上昇できる
- AIを使いこなせるかどうかが最大の分かれ目
AIは敵ではなく強力な味方です。恐れるのではなく「どう活用するか」を考え、自分のスキルを再定義していくことが、これからのフリーランスエンジニアにとって最大の生存戦略となるでしょう。

