稼働日数が変動する案件の契約処理はどうなる?

💼 実務・契約編

はじめに

フリーランスエンジニアとして仕事をしていると、毎月の稼働日数が一定ではない案件に出会うことがあります。
たとえば「週3〜4日程度で稼働」「今月は週5、来月は週2」など、プロジェクトの進捗や予算によって変動するタイプです。

こうした案件は柔軟に働ける一方で、契約の結び方や請求処理が複雑になりがちです。
本記事では、稼働日数が変動する案件の契約の仕組み、報酬計算の方法、トラブルを避けるためのポイントを解説します。


1. フリーランス案件の報酬形態の基本

まずは案件の一般的な報酬形態を整理します。

1-1. 月額固定(準委任契約が多い)

  • 「週5日フル稼働で月80万円」など、稼働日数を前提に月額を決定するスタイル。
  • 実際の稼働が多少変動しても、一定範囲なら月額は変わらないことが多い。

1-2. 日単価・時間単価精算

  • 「日単価4万円」「時間単価5,000円」など、稼働実績に応じて請求する方式。
  • 稼働日数が変動する案件ではこちらが多い。

1-3. 成果報酬・請負型

  • 特定の成果物に対して報酬が決まる。稼働日数には依存しない。
  • 小規模開発やWebサイト制作などでよく使われる。

稼働日数が変動する案件のほとんどは 準委任契約(日単価・時間単価) か、月額固定+稼働調整ありの形を取ります。


2. 稼働日数が変動する案件の契約パターン

パターン1:月額固定+超過・不足分を精算

最もよくあるのは、「月額○万円(週○日想定)」+稼働日数の増減で日割り精算する形です。

例:

  • 契約:月80万円(週5日想定、20日稼働)
  • 実稼働:18日 → 80万 × 18/20 = 72万円
  • 実稼働:22日 → 80万 × 22/20 = 88万円

この方式は、基本単価がわかりやすく、双方にとってフェアです。


パターン2:完全日単価契約

「日単価4万円、実働分を毎月請求」とするケースです。

  • メリット:シンプルでわかりやすい
  • デメリット:稼働が減った月は収入が大きく減る可能性あり

エージェント経由の案件では、週3〜4日稼働の案件にこの形が多く見られます。


パターン3:時間単価(時給)精算

「時給5,000円、1日8時間稼働想定」など、実際の作業時間で計算するパターンです。

  • タスク単位で柔軟に働きやすい
  • タイムトラッキング(作業ログ提出)が必要な場合が多い

海外リモート案件やクラウドソーシングでは一般的ですが、日本国内のエージェント案件ではあまり多くありません。


パターン4:最低保証+変動分加算

「最低週2日分を保証、それ以上は日単価で加算」という契約もあります。

例:

  • 最低保証:月32万円(週2日)
  • 超過分:日単価4万円で加算
  • 実稼働:週3日ペースなら、32万+4万×4日=48万円

収入を安定させつつ、追加稼働があったときも対応できるバランス型です。


3. 契約書で確認すべき重要ポイント

3-1. 「稼働想定日数」と「精算方法」

  • 週何日を想定しているか
  • 月額固定か日割り精算か
  • 超過・不足の扱い(1日単位か、時間単位か)

特に月額固定と書かれていても、稼働日数が変動した場合の扱いが明記されていないことがあります
後から揉めないよう、必ず契約書で確認しましょう。


3-2. 請求サイクルと支払サイト

  • 請求の締め日(末日/20日締めなど)
  • 支払いサイト(30日/60日など)

支払いサイトが長いとキャッシュフローに影響するため、フリーランス側も把握しておく必要があります。


3-3. 稼働報告の方法

  • 日報提出か、稼働表の提出か
  • タイムトラッキングツールの使用有無
  • クライアントが承認するフロー

報告方法を事前に決めておくと、後から「認められない工数があった」というトラブルを防げます。


3-4. 中途解約時の精算

稼働日数変動型の契約では、途中解約になった場合の精算方法も重要です。

  • 「解約日は通知から30日後」などのルールがあるか
  • 途中までの稼働分が日割りで支払われるか
  • 解約違約金やペナルティがないか

4. トラブルを避けるための実務ポイント

4-1. 稼働状況を毎週共有する

「今月は想定より日数が少なくなりそう/増えそう」という情報は早めに共有しましょう。
契約上の想定を超えた場合、後から調整すると揉める原因になります。

4-2. 稼働表・ログをきちんと残す

  • ExcelやGoogleスプレッドシートで稼働日を記録
  • タイムトラッキングツールを活用
  • 契約更新や請求時に提示できるようにしておく

証拠がないと支払いトラブル時に不利になります。

4-3. 上限・下限を契約で定める

「週2〜3日程度」とだけ書かれた契約は危険です。
最低保証日数や上限稼働日数を明記してもらうことで、過剰な稼働や収入減少を防げます。

4-4. 口頭の取り決めは必ず文書化

Slackやメールでも良いので、変更があったらテキストで残す習慣を持つと安心です。


5. 実際の請求例

ケース1:月額固定+日割り精算

  • 契約:月80万円(週5日想定20日)
  • 実績:17日稼働
    → 請求:80万 × 17/20 = 68万円

ケース2:完全日単価

  • 契約:日単価4万円
  • 実績:15日稼働
    → 請求:4万 × 15 = 60万円

ケース3:最低保証+追加稼働

  • 契約:最低週2日保証(32万円)+追加4万円/日
  • 実績:週3日(+4日分)
    → 請求:32万+4万×4=48万円

まとめ

稼働日数が変動する案件は柔軟な働き方ができる一方、契約や請求処理でトラブルが起きやすい分野です。
フリーランスとしては以下をしっかり押さえておくことが重要です。

  • 契約書で稼働想定日数・精算方法・上限/下限を確認する
  • 月額固定でも、超過・不足分がどう扱われるかを明記してもらう
  • 稼働実績を記録し、早めに共有・調整する
  • 中途解約や支払サイトも事前に確認する

報酬計算のルールを明確にしておけば、収入の見通しが立てやすく、安心して柔軟な働き方ができるようになります。
契約前に疑問点を遠慮なく確認するのは、フリーランスとしてプロ意識を持つ上でも大切です。

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