はじめに
フリーランスとして独立したとき、多くの人がまずエージェントを活用して案件を探します。
しかし、「中間マージンを取られたくない」「自分の営業力を試したい」という思いから、直営業(企業に直接営業して仕事を獲得すること) に挑戦する人も少なくありません。
筆者も独立初期に、勇気を出して企業に直接アプローチし、初めて自力で案件を獲得しました。
結果として仕事は取れたものの、失敗だらけで学ぶことが多かったです。
今回は、私が初めて直営業をしたときのリアルな失敗談と、そこから得た教訓を共有します。
1. 直営業に挑戦したきっかけ
独立してしばらくはエージェント経由で案件を受けていました。
しかし、次第に次のような思いが強くなりました。
- エージェント手数料が高く感じる(20〜30%取られるのが当たり前)
- もっと高単価で直接取引したい
- 技術だけでなく営業力も鍛えたい
そこで、過去のつながりやTwitter・LinkedIn経由で知り合った企業にコンタクトを取り、自分のスキルを売り込むことにしたのです。
2. 最初に直営業で取った案件と失敗したこと
2-1. 失敗① 単価交渉をうまくできなかった
初めて直契約を結んだとき、提示された金額が 「月40万円/週5日フル稼働」 でした。
エージェント経由の案件なら60〜70万円は取れていたので、本当は安いのですが、
「せっかく自分で営業して取れた案件を逃したくない」という気持ちから、そのまま承諾してしまいました。
結果:
- 実際の工数は多く、残業も発生
- 単価を上げてほしいと後から言いにくい
- 「自分の市場価値を正しく伝えなかった」ことを後悔
教訓:
初回でも「自分の希望単価」を明確に伝えるべき。
「相場ではこのくらいですが、今回の条件だと○○円でご相談したい」と、根拠を持って交渉する。
2-2. 失敗② 契約内容を甘く見た
契約書をほとんど確認せず、言われるままにサインしてしまいました。
特に気にしなかったのが以下の点です。
- 納期の定義が曖昧(機能追加が発生しても同じ報酬)
- 中途解約時の条件が不利(クライアントが一方的に即日解約できる条文)
- 支払サイトが長い(60日後払いでキャッシュフローが苦しくなった)
結果:
- 後から追加仕様を大量に依頼されても報酬は据え置き
- 急に契約終了を告げられたが、残りの作業分はほぼ無償になった
- 報酬が振り込まれるまで資金繰りに苦労した
教訓:
契約書は必ず読み、わからない条項は調べるか専門家に相談する。
「納期・支払い条件・解約条件・追加作業の扱い」は特に確認する。
2-3. 失敗③ 要件定義が曖昧なままスタート
クライアントが「こんなサービスを作りたい」と話してくれただけで、詳細仕様は決まっていませんでした。
私も「動くものを作ればいいだろう」と軽く考えてスタート。
結果:
- 実装途中で仕様変更が何度も発生
- 作業工数が当初の倍以上になった
- 追加費用を請求しづらく、結局赤字に近い状態に
教訓:
仕様が固まっていない場合は、まず「要件定義フェーズ」を分けて提案する。
見積もり時に「想定範囲外の変更は別途料金」と明記しておく。
2-4. 失敗④ サポート範囲を決めていなかった
納品後、クライアントから毎日のように「ちょっと修正して」「質問がある」と連絡がきました。
最初の契約では保守やサポート範囲を決めていなかったため、結果的に無償対応が続く羽目に…。
教訓:
納品後のサポートは契約に明記する。
「納品後○週間は無償対応、それ以降は月額○万円」など、最初に決めておくことが重要。
3. 初めて直営業する人へのアドバイス
3-1. 単価相場を事前に調べる
- エージェント案件の相場(週5で月60〜80万円)をベースに、自分のスキルを加味して設定
- 「安すぎる金額を受けない」ことが後々のキャリアを守る
3-2. 契約条件を必ず書面で確認
- 支払いサイト、納期、解約条件、サポート範囲を明文化
- わからない場合は弁護士ドットコムやクラウドサインの相談サービスを使うのも有効
3-3. 要件定義を丁寧に
- クライアントの要望をそのまま受け入れず、「仕様書」「工数見積もり」を先に出す
- 仕様変更があれば追加費用が発生することを伝える
3-4. 自分のキャッシュフローを意識
- 直営業は入金が遅くなることがある
- 最初は「支払いサイト30日以内」を目安に交渉すると安心
3-5. 営業資料・ポートフォリオを用意
- GitHubやポートフォリオサイトを整備しておくと、信頼感が増す
- 過去の制作物を見せると単価交渉もしやすい
4. 直営業のメリットとリスク
メリット
- 高単価を狙える(エージェント手数料がないぶん利益が増える)
- 直接コミュニケーションが取れる(クライアントとの関係を築きやすい)
- 実績を積むと継続案件につながる
リスク
- 契約・交渉・トラブル対応をすべて自分で行う必要がある
- 支払いが遅れたり未払いになるリスクがある
- 要件の曖昧さや仕様変更による工数増加に巻き込まれやすい
5. まとめ
初めて直営業したときの失敗は、ほぼ以下の3つに集約されます。
- 単価交渉をしなかった → 安く買い叩かれた
- 契約条件を軽視した → 支払い・解約・追加作業で損をした
- 要件定義を曖昧にした → 工数増で赤字化した
直営業はリスクもありますが、正しく進めれば高単価・長期的なクライアントとの関係構築が可能です。
✅ 結論:直営業は「営業力+契約力+交渉力」を鍛えるチャンス。最初の案件こそ慎重に単価・契約条件を決めるべき。
私のような失敗を避け、事前準備を整えて挑戦すれば、直営業はフリーランスとしての大きな武器になります。

