フリーランスエンジニアとして活動していると、初回の打ち合わせや商談で**「ところで、単価はどれくらいですか?」**と聞かれる場面があります。
ここでうまく答えられないと、相場より低い金額を提示してしまったり、信頼感を失ったりするリスクがあります。
私も独立初期はこの質問が苦手で、「えっと…相場はこれくらいですかね…」と曖昧に答えたせいで単価を下げられたことがあります。
しかし経験を積む中で、自信を持って伝えるコツと、交渉の基本フレームが分かってきました。
この記事では、フリーランスエンジニアがクライアントから単価を聞かれたときにどう答えるべきか、実践的なポイントをまとめます。
まず理解しておきたい:単価を聞かれるシチュエーション
クライアントが単価を聞く意図は大きく3つに分けられます。
- 予算感の確認
「この人を雇うにはいくらくらい必要か」を把握したいだけの場合。 - 価格交渉のスタートライン探し
相手の希望金額を先に聞き出し、そこから交渉したいケース。 - 選定のための比較
複数候補がいる中で、コスト感を比べたいだけの場合。
この意図を意識しておくと、回答を組み立てやすくなります。
単価を答えるときの基本スタンス
✅ 1. 即答できるように「自分の価格表」を持つ
- 1日単価(例:8万円/日)
- 週3・週5ベースの月単価(例:週5で80万〜100万、週3で50万〜60万)
あらかじめ「これが自分の標準価格」という軸を決めておくと、自信を持って答えやすくなります。
特に週3・週4稼働の場合の金額感は質問されやすいので、想定しておきましょう。
例:
「基本的には週5常駐で80〜100万円/月程度を目安としています。週3〜4日稼働であれば○○万円前後で対応可能です。」
✅ 2. 「レンジ」で伝えるのが安全
単価をひとつの数字で答えると交渉の余地がなくなります。
80〜100万円のようにレンジで答えると、案件内容や責任範囲によって調整可能な印象を与えられます。
- NG:「80万円です!」(→相手は「じゃあ70万でどう?」と下げてくるかも)
- OK:「80〜100万円の間で、担当範囲や責任レベルによって調整しています」
✅ 3. 「実績」や「成果ベース」で根拠を添える
ただ数字を出すより、なぜその金額なのかを説明できると説得力が増します。
- 技術力や経験年数(「iOS開発10年」「SwiftUI・API設計まで一貫対応」など)
- 過去の成果(「MAU5万人規模のアプリを開発」「パフォーマンス改善で起動速度を半減」など)
- 複数スキルを提供できる(「フロントからバックエンド、インフラ構築までカバー」など)
例:
「過去にはMAU10万人のiOSアプリ開発やAPI設計まで担当し、起動速度を50%改善した実績があります。
そのため、週5で80〜100万円程度を目安としています。」
✅ 4. 「相手の条件を聞き返す」テクニックも有効
こちらが先に数字を出すと、交渉の主導権を相手に渡してしまうことがあります。
もしタイミング的に早いと感じたら、一度ボールを相手に返すのもありです。
例:
「ありがとうございます。ちなみに御社のご予算感はどのくらいをお考えですか?」
「まずは業務範囲や稼働日数を伺ったうえで、お見積もりしたいのですが、想定されている予算レンジはありますか?」
こうすると、相手の想定予算を先に知ることができ、条件を合わせやすくなります。
✅ 5. 「単価交渉」につながる余白を残す
単価を答える=その金額で即決、ではありません。
業務範囲・稼働日数・納期・成果責任によって調整できることを示しておくと、柔軟な印象を与えられます。
例:
「基本は80〜100万円の間ですが、業務範囲や納期、責任レベルによっては調整可能です。」
ケース別・回答例
💻 ケース1:初回のカジュアル面談で聞かれた
「ご参考までに、週5常駐で80〜100万円/月を目安にしています。
週3〜4日稼働の場合は○○万円程度でご相談可能です。
業務範囲や開発フェーズによって調整できますので、詳細を伺った上でお見積もりします。」
📝 ケース2:まだ業務内容が決まっていない段階
「業務範囲や責任レベルによって変わりますが、週5稼働で80〜100万円/月程度が目安です。
もし大まかな予算レンジがあれば教えていただけると、それに合わせたご提案がしやすいです。」
🌍 ケース3:海外クライアントから英語で聞かれたとき
“For full-time engagement, my usual rate is around $6,000–$8,000 per month.
For part-time (3–4 days a week), it would be $3,500–$5,000 depending on the scope and responsibilities.”
単価を決める前にやっておくべき準備
- 市場相場を調べておく
- レバテックやMidworksなどエージェントの単価相場を参考にする。
- SNSやフリーランスコミュニティでリアルな相場を情報収集。
- 自分の提供価値を言語化しておく
- 「技術スタック+成果」で説明できるようにしておくと説得力が増す。
- 価格表を持っておく
- 週5・週4・週3の月単価をあらかじめ決めておく。
- 最低ラインと理想ラインを決めておく
- 「この金額以下なら断る」ラインを決めておくと交渉時に迷わない。
単価交渉を有利にするためのコツ
- 複数のエージェント・クライアントと話をして相場感を把握する
→ 比較材料が増え、交渉の説得力が上がる。 - ポートフォリオや成果物を事前に提示する
→ 「この実績ならこれくらい」と納得してもらいやすい。 - 支払いサイトを確認する
→ 単価が同じでも、入金が早いか遅いかでキャッシュフローが変わる。 - 強気に出るより“根拠+柔軟さ”が重要
→ 「この実績なのでこれくらいですが、条件次第で調整できます」と伝えるのが最も印象が良い。
まとめ:自信を持って答えるためには「事前準備」がすべて
- クライアントから単価を聞かれたら、自分の基準単価+レンジ+根拠をセットで答えるのが基本。
- 迷うと単価を下げられる可能性があるため、最低ラインと理想ラインを事前に決めておくことが大切。
- 相手の予算感を先に聞き返したり、調整の余地を示すことで交渉の主導権を握りやすくなる。
- 市場相場を把握し、ポートフォリオを整えておくことで自信を持って回答できるようになる。
フリーランスは「自分の価格を自分で決める」必要があります。
最初は怖いかもしれませんが、準備さえすれば単価を聞かれても堂々と答えられるようになります。
自分の価値をしっかり言語化し、単価交渉をストレスなくこなしていきましょう。

