会社員のときは健康保険・雇用保険・労災保険などが自動的に付いてきますが、フリーランスになるとこれらの多くは自分で備える必要があります。
いざ独立を考えたときに「保険って何に入ればいいの?」「全部入ると高すぎるのでは?」と迷う人も多いでしょう。
私自身、独立したときに一番悩んだのがこの部分でした。
会社員時代は意識していなかったリスクが一気に自己責任になるので、どの保険を優先すべきかを整理しておくことが重要です。
この記事では、フリーランスエンジニアがまず検討すべき保険の種類と、おすすめの入り方を実体験ベースで解説します。
まず理解しておきたい:フリーランスの保険事情
- 健康保険・年金は必須
→ 国民健康保険と国民年金に加入するのが基本。
→ 元会社員なら「任意継続」も選択肢。 - 雇用保険・労災保険は基本的に適用外
→ 失業手当や労災補償は原則ありません。自分で代わりになる保険を用意する必要があります。 - 保険は“万が一の大ダメージを防ぐ”もの
→ 全てをカバーするのではなく、リスクの大きい部分に優先的に備えるのがポイントです。
フリーランスが加入を検討すべき保険の優先順位
1. 所得補償保険(就業不能保険)
フリーランスにとって最重要なのが、病気やケガで働けなくなったときの収入補償です。
会社員なら有給や傷病手当金がありますが、フリーランスはゼロになります。
- 働けなくなったときに月10〜30万円程度の生活費を補償
- 自分の希望額に応じて設計できる
- 保険料は月5,000〜1万円前後が目安
私は独立直後にまずこれに加入しました。万が一数ヶ月働けなくなったら貯金だけでは不安だったからです。
「貯金3〜6ヶ月分+所得補償保険」で安心感が大きく変わります。
おすすめの入り方
- 大手損保(損保ジャパン・東京海上・AIG など)の「所得補償保険」
- フリーランス協会の「ベネフィットプラン」経由で加入(団体割引あり)
2. 賠償責任保険(業務遂行・情報漏えいなど)
システム開発やWeb制作では、納品物の不具合や情報漏えいなどで損害賠償を請求されるリスクがあります。
- クライアントから数百万円〜数千万円規模の請求を受ける可能性もゼロではない
- 個人で支払うには大きすぎるリスクをカバー
私も直請け案件を増やすタイミングで入りました。大きな金額の損害賠償に備えられるのは安心です。
おすすめの入り方
- フリーランス協会の「フリーランス賠償責任補償」
→ ベネフィットプラン年会費1万円で自動付帯(最大5,000万円補償)。 - 個別に損保会社から加入する場合もあり(ただし個人だと審査が厳しめ)。
3. 医療保険(入院・手術の備え)
国民健康保険でも医療費の自己負担は3割で、高額療養費制度もあります。
ただし、長期入院や先進医療、差額ベッド代などの出費は自己負担になります。
- 大きな手術・長期入院時に給付金が出る
- 入院1日5,000〜1万円、手術給付金などが一般的
- 月2,000〜3,000円程度から加入可能
私は最低限の医療保険を掛けています。特に小さな子どもがいる方や貯金が少ない独立初期は安心材料になります。
4. 生命保険(扶養家族がいる場合)
扶養家族がいる場合は、万が一の死亡時に備える生命保険も検討します。
独身や扶養家族がいない場合は必須ではありません。
- 定期保険で必要な保障額だけ確保するのがおすすめ
- 月2,000〜3,000円程度から加入可能
家族がいる友人は「死亡保障+所得補償保険」のセットで備えていました。
自分だけなら生命保険は後回しでも問題ありません。
5. 退職金代わりの「小規模企業共済」
これは「保険」というより、失業・老後に備える積立制度です。
もし廃業したときや老後に向けて資金を貯めることができ、全額所得控除で節税メリットが大きいのが魅力。
- 月1,000円〜7万円まで自由に積み立て可能
- 廃業・収入減少時に解約手当金や共済金を受け取れる
- 節税しながらリスク備えができる
私は独立2年目から加入しました。掛金は全額経費扱いではないものの所得控除できるため、節税しつつ“失業保険代わり”になります。
その他の選択肢
- iDeCo(個人型確定拠出年金)
→ 老後資金の積み立て+節税に有効。ただし60歳まで引き出せないので生活防衛には向かない。 - 労災特別加入制度
→ 建設業など現場作業のある職種向け。ITエンジニアは利用する人は少ない。
保険選びのコツ(フリーランス向け)
✅ 1. 優先順位をつける
- 働けなくなるリスク(所得補償)>賠償リスク>医療費>死亡保障>老後資金
- 特に独立初期は「仕事ができなくなったときの収入ゼロ」をまず防ぐのが最優先。
✅ 2. 団体加入でコストを下げる
- フリーランス協会などを活用すると、個人で入るより割安になることがあります。
✅ 3. 契約前に内容をよく確認する
- 所得補償の免責期間(30日・60日など)や支払期間に注意。
- 賠償責任保険の対象業務を確認(システム開発・コンサル対応など)。
✅ 4. 貯金とのバランスを考える
- 保険はあくまで“リスクの大きな部分を補う”もの。
- 「生活防衛資金+最低限の保険」で過剰加入を避けるのが賢いです。
私の保険加入ロードマップ(実体験)
- 独立1年目:所得補償保険だけ加入(最優先)
- 2年目:小規模企業共済を開始、賠償責任補償付きのフリーランス協会に加入
- 3年目以降:医療保険を追加、家族ができたタイミングで生命保険を検討
最初から全部入る必要はありません。大きなリスクから順番にカバーしていくのがおすすめです。
まとめ:まずは「働けなくなったとき」と「賠償リスク」に備えよう
- フリーランスは会社員のような失業保険や労災がないため、自分で保険を選んで備える必要がある。
- 優先順位は ①所得補償保険 → ②賠償責任保険 → ③医療保険 → ④生命保険(家族がいる場合) → ⑤小規模企業共済 の順が現実的。
- フリーランス協会を活用すると、賠償責任補償+所得補償を割安でカバーできる。
- すべてを一度に揃える必要はなく、まずは“働けない”リスクをカバーし、順次拡張していくのがおすすめ。
独立は自由ですが、万が一の備えをしないと精神的にも金銭的にも大きなダメージになります。
必要最低限の保険から整え、安心してフリーランスエンジニアとしてのキャリアを進めていきましょう。

