会社員時代は雇用保険に加入していれば、失業した際に**「失業手当」**がもらえます。
しかしフリーランスになると「失業したら一切のセーフティネットがないのでは?」と不安になる人も多いでしょう。
結論から言うと、会社員のような雇用保険の失業手当は基本的にフリーランスにはありません。
しかし、全く何もないわけではなく、いくつかの公的・民間のセーフティネットが用意されています。
私自身も独立時にこのあたりを調べて安心材料にした経験があります。
この記事では、フリーランスエンジニアが失業や仕事が途切れたときに使える制度・保険・備え方をわかりやすく解説します。
フリーランスには雇用保険がない=失業手当は基本なし
まず押さえておくべき大前提は、個人事業主・フリーランスは雇用保険に加入できないということです。
- 雇用保険は「雇われている労働者」が対象。
- フリーランスや業務委託契約者は労働者に当たらないため、雇用保険料を払っていない=失業手当ももらえない。
独立後に仕事がなくなっても、会社員のように自動的に給付が受けられる制度は存在しません。
この点を理解したうえで、代わりとなるセーフティネットを知っておく必要があります。
公的に使えるセーフティネット
1. 国民健康保険の「傷病手当金」(条件付き)
フリーランスでも、国民健康保険に加入していて、病気やケガで働けなくなった場合は傷病手当金が受けられる場合があります。
- 支給条件:医師の指示で仕事ができない状態が続く場合
- 支給額:直近の所得から算出される日額の2/3程度
- 支給期間:最長1年6か月
ただし、市区町村によって制度の有無や条件が異なります。
加入している自治体の国民健康保険窓口に確認が必要です。
2. 小規模企業共済の「共済金」
フリーランスの退職金制度とも呼ばれる小規模企業共済。
掛金を積み立てておくと、廃業や収入減少時に共済金を受け取れます。
- 月1,000円〜7万円まで任意で積立可能
- 廃業時や契約解除などで「解約手当金」や「共済金」を受け取れる
- 積立中は全額が所得控除になり節税メリットも大きい
ただしこれは失業保険というより、自分で積み立てる退職金制度です。
「もしものときの備え」としては非常に有効です。
3. 国の緊急小口資金・総合支援資金(特例貸付)
コロナ禍で注目された制度ですが、景気悪化時などに生活費の貸付支援を受けられる場合があります。
無利子・据置期間ありで借りられるため、急場のキャッシュフロー対策に使えます。
- 緊急小口資金:最大20万円程度
- 総合支援資金:最大60万円程度(条件による)
「給付」ではなく「貸付」ですが、急な収入ゼロ時のブリッジ資金として役立つことがあります。
4. 住民税の減免・国民年金保険料の免除・猶予
失業や収入減で生活が厳しくなった場合は、税金・社会保険料の減免や猶予を受けられることがあります。
- 国民年金保険料の免除・猶予
- 国民健康保険料の減免
- 住民税・所得税の猶予・減免
知らないまま滞納するより、早めに役所へ相談する方が安心です。
民間の備えでカバーする方法
公的な失業保険はなくても、民間の制度やサービスをうまく活用することでリスクを減らせます。
1. フリーランス協会の「所得補償制度」
フリーランス協会(年会費1万円のベネフィットプラン)では、**万が一の収入減少をカバーする所得補償制度(オプション加入)**を提供しています。
- 病気やケガで働けなくなった場合、月額最大30万円〜の所得補償が受けられるプランあり
- 加入条件が会社員向け保険より緩めで、フリーランスでも入りやすい
私も独立初期は「もし病気で数ヶ月働けなくなったらどうしよう」と不安だったので、この制度を調べました。
自分に必要な補償額を選べるのが安心感につながります。
2. 所得補償保険(就業不能保険)
民間保険会社が提供する就業不能保険も選択肢です。
- 病気やケガで働けなくなった場合の生活費をカバー
- 月5,000〜1万円程度の保険料で、月20万〜30万円の給付を設定できる
- 自営業者でも加入できるプランが増えている
「貯金だけでは不安」という人は検討する価値があります。
3. 小規模企業共済+iDeCoで自己防衛
- 小規模企業共済は失業時の資金として活用できる。
- iDeCo(個人型確定拠出年金)は原則老後資金ですが、節税と将来の備えに有効。
**「自分で失業保険を積み立てる」**イメージで、早めに少額からでも始めると安心です。
エージェント案件と直契約案件での安全度の差
同じフリーランスでも、案件の取り方によってリスクは変わります。
- エージェント経由案件
- 支払いサイトが明確(多くは月末締め翌月15〜30日払い)
- 突然案件終了のリスクはあるが、次の案件を紹介してもらいやすい
- 営業活動が少なく、空白期間を減らせる
- 直契約案件
- 単価が高いが、案件終了後の次がすぐ見つかるとは限らない
- 支払いサイトが長い(翌々月末など)場合もあり、キャッシュフローが不安定になりやすい
収入の安定性を重視するなら、エージェント経由をベースにしつつ直契約を増やすのがおすすめです。
万が一の空白期間にも対応しやすくなります。
失業リスクに備える具体的なステップ
- 6か月分の生活費を貯金する
→ 最低限の生活防衛資金があると精神的にも安定します。 - 小規模企業共済に加入して積み立てを開始する
→ 万が一の廃業時の資金&節税効果が大きい。 - 所得補償保険を検討する
→ 病気やケガに備えたい人は必須レベル。 - フリーランス協会に加入する
→ 賠償責任補償+所得補償オプションで安心感を高められる。 - 複数のエージェント登録やネットワークづくりをしておく
→ 案件が切れたとき、すぐ次を探せる体制をつくる。
まとめ:会社員のような失業保険はないが、自分で備えれば不安は減らせる
- フリーランスには雇用保険の失業手当はないが、国民健康保険の傷病手当金・小規模企業共済・税金や保険料の猶予など公的制度は一部ある。
- 民間では、フリーランス協会の所得補償制度や就業不能保険が現実的な選択肢。
- キャッシュフロー対策として、6か月分の生活費の貯金+エージェント複数登録は有効。
- 自分専用の「失業保険代わりの仕組み」を早めに作っておくことで、独立の不安を大きく減らせる。
フリーランスは「すべて自己責任」と言われがちですが、制度や仕組みを知っておけば十分に備えることが可能です。
独立前からこれらのセーフティネットを理解し、計画的に準備しておくことで、安心してフリーランスエンジニアのキャリアをスタートできるはずです。

