フリーランスとして活動していると、**「できればエージェントを挟まず、企業と直接契約したい」**と考える人は多いでしょう。
中間マージンを省ける分、単価を上げやすく、条件交渉の自由度も増します。特に地方在住の方や、地元の企業と直接つながりたい人にとっては魅力的な選択肢です。
しかし、実際に地方企業と直契約を結ぶのは簡単ではありません。
私自身も独立当初は「地元の企業に直接営業してみよう」と考えましたが、実際は想像以上に難しく、いくつもの失敗を重ねてきました。
この記事では、地方企業と直契約を結ぶためのリアルな方法と注意点を、実体験を交えてお伝えします。
地方企業と直契約が難しい理由
まずは現実的なハードルを理解しておくことが重要です。
1. 「フリーランスと直接契約」の文化がまだ浸透していない
都市圏のスタートアップやIT企業ではフリーランスとの直接契約が一般化していますが、地方ではまだ「個人に発注するのは不安」という企業も多いです。
法人としての信頼感や支払い管理のしやすさを重視する文化が残っているため、初めての取引では警戒されやすい傾向があります。
2. 案件情報が表に出にくい
都市部ではWantedlyやGreen、LinkedInなどで業務委託募集を見かけますが、地方企業の多くはそういった媒体を使っていません。知人経由や取引先の紹介でエンジニアを探していることが多く、そもそも情報がオープンになりにくいのが現状です。
3. 価格感覚のギャップ
地方企業では「ITは安く発注できるもの」という感覚がまだ強い場合があります。都市部の相場(80〜100万円/月)を提示すると、驚かれてしまうこともあります。
こうした背景を踏まえると、都市部と同じ方法では案件を見つけづらいということが分かります。
地方企業とつながるための現実的なアプローチ
1. コミュニティ・勉強会からつながる
地方ではリアルな人脈づくりが特に有効です。
地元のIT系勉強会、テックコミュニティ、コワーキングスペースのイベントなどに顔を出すと、直接経営者や担当者と出会えることがあります。
- 地元のエンジニア向けMeetupやLT会に参加する
- コワーキングスペースに入会して常駐する
- 商工会議所やIT産業支援センターのイベントを活用する
私も一度、地元のコワーキングスペースで知り合った経営者から「自社ECサイトをリニューアルしたい」という相談を受けたのが、初めての直契約案件でした。
顔を合わせて信頼を築くことが、地方ではまだまだ強い武器です。
2. LinkedIn・X(旧Twitter)・noteで発信する
直接会えなくても、SNS発信をきっかけに企業から声がかかるケースがあります。
特に地方企業の若手経営者やデジタル推進担当は、XやLinkedInで情報収集していることが多いです。
- 自分の技術スタックや開発実績を定期的に投稿
- 個人開発アプリや実績をポートフォリオとして公開
- noteなどで「開発事例」「アプリをこう成長させた」という記事を書く
発信がきっかけで「自社でもこういうアプリを作りたい」とDMをもらえることがあります。
私はXで個人アプリの開発ノウハウを発信していたところ、地方の製造業から「工場向けのiPadアプリを開発してほしい」という相談を受けたことがあります。
3. 既存の取引先や知人経由で広げる
最も現実的で成功率が高いのがこの方法です。
フリーランス初期はまずエージェント経由で実績を積み、その中で知り合った担当者や同僚から紹介してもらうのが堅実です。
- 元同僚が転職した先の企業に声をかけてもらう
- 以前のクライアントから別の企業を紹介してもらう
- エージェント案件で成果を出し、直接依頼につなげてもらう
一度信頼を得れば「次は直接お願いしたい」と声がかかることもあります。
4. 地元特化型の求人・マッチングサービスを使う
大手のフリーランスサイトだけでなく、地方特化型の求人サービスを使うのも選択肢です。
- Workship(リモート・週3案件が多いが地方企業も増加)
- Reworker(リモート案件中心)
- 地域特化の求人サイト(例:北海道ベンチャーサミット、福岡移住計画など)
これらは地方企業が初めて外部エンジニアを探す際に利用することも多いです。
5. 直接営業メール・問い合わせ
古典的ですが、まだまだ有効な方法です。
ただし、「いきなり営業」ではなく、調査と提案をセットにすることがポイントです。
- 企業のWebサイトを調べ、改善点や追加機能のアイデアを考える
- 「御社の○○を拝見し、××な改善が可能と考えています」という形でメールする
- 実績やポートフォリオのリンクを添付する
地方の中小企業は「自分たちに何ができるかわからない」ケースが多いので、具体的な提案が刺さりやすいです。
直契約を狙う際の注意点
💡 契約・支払い条件はしっかり確認する
エージェントが間に入らない分、契約条件や支払いサイトを自分で交渉する必要があります。
- 契約書は必ず取り交わす(業務委託契約書)
- 支払いサイト(請求から入金までの日数)を確認
- 源泉徴収の有無を把握する
特に地方企業は「月末締め翌々月払い」などサイトが長めなこともあるので要注意です。
💡 価格感覚を調整する
都市部の相場感でそのまま提示すると驚かれることもあります。
「週3日で月40〜50万」「週5日で月70〜80万」あたりが現実的な着地点になることが多いです。
ただし、デジタル化が進んでいる企業や資金力のあるメーカーでは都市部並みの単価も狙えます。
💡 信頼構築に時間がかかる
一度契約できれば長期的に続くことも多いですが、最初の契約までは時間がかかることを覚悟しましょう。
実績ゼロの状態でいきなり直契約を狙うより、まずはエージェント案件で経験を積み、ポートフォリオや実績を揃えてからの方がスムーズです。
私が直契約を獲得できたときの流れ(実例)
- エージェント案件で地方企業の開発を経験
→ プロジェクト中に経営者や現場担当者と直接やり取りする機会があった。 - 開発後、直接声をかけられる
→ 「次の機能追加は直接お願いしたい」と依頼を受ける。 - 契約条件を交渉
→ 支払いサイト・単価・稼働日数を調整し、業務委託契約を締結。
このように、まず実績を作ってから直接契約に発展するケースが多いです。
いきなり飛び込み営業するより、“信頼の種”をどこかで蒔いておくのが近道だと感じます。
まとめ:直契約は一発勝負ではなく、信頼の積み重ね
- 地方企業と直契約は「文化・情報・価格感覚」の壁があり、都市部より難易度が高い。
- まずはコミュニティ参加やSNS発信で顔を売り、実績を積むのが近道。
- エージェント経由の案件を足がかりにして、信頼を構築してから直契約に発展させる方法が現実的。
- 契約条件・支払いサイト・価格交渉などは自分で管理する必要があるので注意。
「地元の企業と直契約して、自由度の高い働き方をしたい」という目標は、一歩ずつ信頼を積み上げれば現実的に達成可能です。
まずは実績を作り、つながりを増やすところから始めてみてください。

