2017〜2021年にかけての仮想通貨ブーム、2021〜2022年のNFT・DeFiバブル、そしてその後の市場冷却期を経て、Web3・ブロックチェーン業界は一時の熱狂を過ぎたように見えます。しかし、2025年を迎えた今、フリーランスエンジニアにとってこの分野は「終わった」のでしょうか?
答えは NO です。むしろ、投機的な熱狂が落ち着いたことで、本質的なプロダクト開発やインフラ整備に集中するフェーズへ移行していると言えます。
本記事では、これまでの市場動向を振り返りながら、Web3・ブロックチェーン案件の今後の需要予測を解説します。
1. Web3市場のこれまでの流れと現状
仮想通貨バブルからユースケース模索へ
- 2017〜2020年:ビットコイン・イーサリアムを中心に投機的な熱狂が発生。ICOによる資金調達が盛んになり、ブロックチェーン開発案件も増加。
- 2021〜2022年:NFTとDeFi(分散型金融)が急成長。アートやゲーム分野のNFT、ステーキングやDEX(分散型取引所)案件が多く登場。
- 2022年末以降:FTXショックなどで市場が冷却。投機一辺倒のプロジェクトが淘汰され、真に価値あるユースケースの開発へシフト。
この変化は、フリーランスエンジニアにとってプラスの面があります。短期的な投機案件は減りましたが、プロトコルの改良、インフラ構築、実用性の高いサービス開発が求められる状況になったからです。
主要技術の成熟
- レイヤー2の普及:イーサリアムのスケーリングを目的とするレイヤー2(Optimism, Arbitrum, zkSync など)が実用化。
- クロスチェーン技術:Polkadot や Cosmos に代表される、異なるチェーン間の相互運用が進展。
- スマートコントラクトの安全性向上:監査やセキュリティツールが充実し、安定稼働を重視するプロジェクトが増加。
これにより、「ブロックチェーンを使ったプロダクトを安全かつ安価に構築する」基盤が整いつつあります。
2. 今後の需要が見込まれる分野トップ5
1位:DeFiの高度化と金融インフラ統合
DeFiは2021年の盛り上がりを経て、“実用フェーズ”へ移行しています。
特に以下のニーズが伸びると予想されます。
- 金融機関と連携する ハイブリッド型DeFi(CeDeFi)
- 安定した利回りを提供するプロトコルの構築・監査
- 金融規制対応を意識したスマートコントラクト開発
- 金融API・KYC/AML統合などのバックエンドエンジニアリング
従来の単なる利回り提供型から、法的整備やユーザー保護を意識した安全な金融サービスへ進化するタイミングです。
2位:NFT 2.0(実用型NFTと所有権証明)
NFTアートバブルは落ち着いたものの、デジタル所有権の証明や会員権的利用は今後も需要があります。
- チケット、会員権、ゲームアイテム、デジタル不動産などのユースケース
- 大企業によるファンマーケティングでのNFT活用
- ウォレットレス(メール・SNSアカウント連携型)UXの整備
- 既存EC・コンテンツプラットフォームとの統合
技術的には、NFTをユーザーが意識せず使える体験設計が重要になり、ウォレット・スマートコントラクト・UIの統合ができるエンジニアの価値が高まっています。
3位:企業向けブロックチェーン・サプライチェーン管理
投機市場が落ち着いたことで、企業の基幹システムにブロックチェーンを活用する動きが再び増えています。
- 製造業や物流のトレーサビリティ
- 高級品・食品の真正性証明
- 医療・ヘルスケアデータの共有基盤
- データ改ざん防止・監査証跡管理
特に日本国内では、サプライチェーン透明化や食品・医薬品トレーサビリティ関連の実証実験が進んでおり、大企業案件での受託需要が伸びる可能性があります。
4位:Web3ゲーム(GameFi)の再成長
GameFi は2021年のブーム後に急速に冷え込みましたが、“遊びの楽しさ”を重視した第二世代が登場しつつあります。
- ゲーム体験を軸にしたトークンエコノミー設計
- NFT資産のユーザー間取引を支えるマーケットプレイス開発
- Web3と従来ゲームのハイブリッド型バックエンド
- 安価で高速なトランザクション実装(レイヤー2、独自チェーン)
Unity や Unreal Engine とスマートコントラクトを繋げられる人材は特に需要が高いです。
5位:インフラ・ツール開発(ウォレット、SDK、セキュリティ)
Web3を一般ユーザーが使いやすくするための開発者向けツールやセキュリティ分野は今後も成長が続きます。
- マルチチェーン対応ウォレットやアカウント抽象化(Account Abstraction)
- スマートコントラクトのセキュリティ監査・自動脆弱性検出
- 開発者用SDKやAPIプラットフォーム
- ノーコードでdAppを構築できるツール群
**「開発者の生産性を高める」**技術や、セキュリティ/UXの課題を解決するミドルウェアは需要が安定して伸びると予想されます。
3. フリーランスエンジニアにとってのチャンスと戦略
(1) スマートコントラクト+Web技術の二刀流
- Solidity / Rust(Solana, Substrate)などブロックチェーン特有の言語と、フロントエンド(React, Next.js 等)を両方扱えると重宝されます。
- dApp開発はバックエンドもフロントエンドもセットで進める案件が多く、**“フルスタック×Web3”**はフリーランス市場でも高単価です。
(2) セキュリティ・監査知識を身につける
- ハッキング事件が相次いだことで、セキュリティは最重要課題になりました。
- スマートコントラクト監査や脆弱性診断ができる人材は圧倒的に不足しています。
(3) UX改善・Web2.5的プロダクトの開発
- 「ウォレット接続が難しい」「ガス代が高い」など、Web3のUX課題を解決する技術者は引く手あまた。
- 企業はユーザーがブロックチェーンを意識せず使える体験を求めています。
(4) コンサルティング・要件定義へのステップアップ
- 技術だけでなく、トークンエコノミー設計、規制対応、サービス設計までサポートできると単価が一気に上がります。
- プロダクト初期フェーズの戦略策定から参画できると、単発の実装者ではなく長期パートナーとして関われます。
4. 市場の課題とリスク
- 規制不確実性:国ごとに規制が異なり、金融商品扱いされるリスクがある。
- 市場ボラティリティ:トークン価格や資金調達環境が急変する。
- 技術変化の速さ:新チェーン・新規格が次々登場し、学習コストが高い。
- 人材過剰リスク:投機期に参入した開発者が多く、単純なSolidity実装だけでは差別化しにくい。
このため、**「どの領域に特化し、どんな付加価値を出せるか」**を明確にすることが重要です。
5. まとめ:バブル後の“本格実用フェーズ”でチャンスをつかむ
- Web3・ブロックチェーン案件は、バブル期のような短期投機ではなく、実用性重視の長期プロジェクトが増加していく。
- DeFi高度化、NFT2.0、企業向けトレーサビリティ、Web3ゲーム再成長、インフラツールなどが特に有望。
- フリーランスエンジニアにとっては、**「スマートコントラクト+Web」「セキュリティ」「UX改善」「コンサル的役割」**が差別化のポイント。
一時の熱狂が収まったからこそ、今は実力派エンジニアが活躍できるタイミングです。
「ブロックチェーン=怪しい」と敬遠する人もまだ多い今だからこそ、技術を磨き、将来性のある領域で先行者優位を築くチャンスが広がっています。

