フリーランスエンジニアとして活動を続けていく上で、
「どのエージェントに登録するか」は大きなテーマです。
多くの人が最初に1社へ登録し、そのまま使い続けますが、
実は複数エージェントを戦略的に使い分けることで、
案件の質・単価・安定性が大きく変わります。
一方で、複数登録には情報漏れやスケジュール競合といったリスクもあります。
この記事では、メリットと注意点を整理しつつ、
「賢い使い分け方」と「トラブルを防ぐ管理術」を解説します。
なぜ複数エージェントを使うべきなのか
1社だけに頼ると、担当者の力量や案件傾向に左右されがちです。
複数エージェントを併用することで、以下のような効果が得られます。
・単価相場を比較できる
・条件交渉で主導権を握れる
・案件切れ(収入ゼロ)リスクを分散できる
・異なる分野や働き方の案件に触れられる
特にエンジニアはスキルや志向の幅が広いため、
1社に限定してしまうとチャンスを逃す可能性が高くなります。
複数エージェント運用の基本戦略
1. 目的を分けて登録する
ただ闇雲に登録しても意味はありません。
それぞれに役割を持たせておくことで、効率的に活用できます。
例として、こんな使い分けが現実的です。
・A社:高単価・常駐案件に強い(収入の柱)
・B社:リモート案件に強い(柔軟な働き方の確保)
・C社:週3・副業型(空き時間の補完・リスク分散)
このように「本業用」「保険用」「開発スタイル別」と目的を明確にして登録すると、
同時進行しても混乱が少なくなります。
2. 登録数は3社までがベスト
登録しすぎると情報管理が煩雑になり、
同じ案件を複数社から紹介されるなどトラブルの元になります。
最初は2〜3社に絞り、
それぞれの担当者と信頼関係を築きながら比較・選別していくのが安全です。
1〜2か月運用すれば、自分に合う会社が自然に見えてきます。
3. 同じ案件に複数から応募しない
これは最重要ルールです。
同じ企業案件を複数のエージェント経由で応募すると、
クライアント側で「この人、どちら経由で来ているの?」と混乱が発生します。
最悪の場合、両方のエージェントからブラックリスト扱いされることもあります。
防止策としては、
・応募前に「この案件、他社でも見ました」と正直に伝える
・エージェント管理用のスプレッドシートを作る
(登録社名・担当者・紹介案件・応募日を記録)
誠実な共有は信頼につながります。
4. エージェントごとの「強み」を把握しておく
代表的なタイプを以下に整理します。
| タイプ | 特徴 |
|---|---|
| 大手エージェント(例:レバテック、ギークス) | 案件数が多く、直請けで高単価。サポートも手厚い。 |
| 中堅・専門系(例:テクフリ、フォスターフリーランス) | 領域特化・モダン技術など尖った案件が多い。 |
| リモート・副業特化(例:ITプロパートナーズ、クラウドテック) | 週3や地方フリーランス向け。柔軟性重視。 |
| 独立支援型(例:テックビズ) | 会計・保険などの支援込み。仕組み化に強い。 |
このように性格が違うため、
自分の優先軸(単価・自由度・安定性)に合わせて組み合わせるのがポイントです。
複数登録のリスクと回避策
メリットが大きい一方で、運用を誤るとトラブルにもなります。
代表的なリスクを整理します。
1. 案件情報の重複・混乱
複数の担当者から似た案件を紹介されることがあります。
「別経路で応募済み」を隠したまま進めると、信用を失うリスク大。
対策:
・案件を一覧化して応募経路を明確にする
・どの案件がどの会社経由かを常に記録
・同じ案件を見かけたら、早めに担当者へ報告
2. スケジュール競合と調整ミス
複数エージェントから面談を受けていると、
同じ日時に面接が入ったり、条件がかぶったりすることがあります。
対策:
・Googleカレンダーなどで案件面談を管理
・決まったら他社に「別案件が進んでいる」と伝える
・曖昧な状態で“保留”を続けない(企業側にも迷惑)
信頼を失う最大の原因は「報告の遅れ」です。
調整ミスは必ず自分でコントロールしましょう。
3. 情報流出・企業側の印象悪化
複数のエージェントに同じ職務経歴書を渡すと、
中にはクライアント企業へ無断で共有してしまうケースもあります。
これにより、同じ企業に複数経路であなたの情報が届き、
「管理が甘い人」という印象を与えてしまうことがあります。
対策:
・経歴書には「エージェント名・日付」を明記しておく
・提出前に「この情報はどの範囲で共有されますか?」と確認
・不安な場合は、企業名を伏せた版を最初に渡す
4. 担当者ごとの温度差・連絡負担
複数社を使うと、それぞれの担当者との連絡が増えます。
レスポンスを怠ると「この人、反応が悪い」とマイナス印象になりかねません。
対策:
・返信テンプレートを作っておく
・メールとチャットを統一(どちらで連絡するか明確に)
・「複数登録して比較中」と正直に伝える(多くの担当者は理解してくれます)
効果を最大化するための運用ルール
- 登録時に「他社比較中」と伝える(透明性が信頼を生む)
- 応募経路を記録し、同一案件の重複を防ぐ
- 進行状況を共有し、担当者との信頼を維持
- 定期的に「自分に合うか」を見直し、使わない会社は整理
- 契約更新・単価改定は、他社相場を参考に交渉材料にする
複数登録の目的は「競わせること」ではなく、
「最適な選択肢を見極めること」です。
誠実な運用が結果的に最も得をします。
実践例:効果的な組み合わせモデル
・レバテック(高単価・常駐)+ITプロパートナーズ(リモート・週3)
→ 本業の収入を確保しつつ、空き時間で副業や自作アプリ開発を両立。
・ギークスジョブ(大手案件)+テックビズ(独立支援)
→ 安定収入を確保しつつ、税務・会計などを同時に整備。
・フォスターフリーランス(SI・業務系)+テクフリ(Web・モダン系)
→ 異業種案件を経験し、スキルの幅を広げる。
まとめ:複数エージェントは「保険」であり「比較ツール」
複数登録は面倒に感じるかもしれませんが、
1社依存よりもはるかにリスクが低く、キャリアの自由度も高まります。
・登録は2〜3社に絞る
・同じ案件に重複応募しない
・応募経路・連絡状況を必ず記録
・担当者ごとの対応スピード・提案力を比較する
・信頼できる1〜2社を“長期パートナー”として残す
エージェントはあなたのビジネスパートナーです。
複数登録は敵を増やすことではなく、自分の味方を選別するプロセス。
最終的に残るのは、「信頼できる担当者」と「継続して任せられる関係」です。
その関係を築けたとき、案件獲得はもはや苦労ではなく、
“安定した仕組み”へと変わっていくでしょう。

