はじめに
フリーランスエンジニアとして案件を受注するとき、多くの人が利用するのが「エージェント」です。一方で、スキルや人脈がある人は「直契約」でクライアントとつながることもあります。
報酬額や働き方の違いはよく話題になりますが、見落とされがちなのが税務処理の違いです。
実際に確定申告をする際、「エージェント経由と直契約で経理処理が微妙に変わる」ことがあります。この記事では、そのポイントを整理していきます。
1. エージェント契約の場合の特徴
1-1. 請求書を発行しないケースが多い
エージェント経由の場合、報酬のやりとりは基本的にエージェントが仲介します。
多くのエージェントは「業務委託契約書」に基づき、エンジニアに対して源泉徴収後の金額を支払う形です。そのため、こちらからクライアントに請求書を発行する必要はなく、エージェントが代わりに処理してくれることがほとんどです。
1-2. 源泉徴収されることが多い
報酬から10.21%の源泉所得税が差し引かれて振り込まれます。
この源泉税は、確定申告時に「すでに前払いした税金」として精算されます。結果として納めすぎていれば還付を受けられる仕組みです。
1-3. 支払調書が発行される
年明けにエージェントから「支払調書」が届きます。
- 支払金額
- 源泉徴収額
が明記されているので、確定申告の際にそのまま数字を転記すれば処理がスムーズです。
**→ まとめると、エージェント経由は「経理処理がシンプル」「確定申告がやりやすい」**という特徴があります。
2. 直契約の場合の特徴
2-1. 請求書を自分で発行する必要がある
クライアントと直接契約する場合は、自分で請求書を作成して送付します。
クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードクラウド、弥生など)を使えば簡単に作れますが、毎月の作業として発生する点は押さえておきましょう。
2-2. 源泉徴収されない場合が多い
法人クライアントとの直契約では、源泉徴収がないケースが一般的です。
そのため、報酬は満額振り込まれますが、確定申告時に自分で全額の所得税を計算して納める必要があります。
エージェント経由に慣れていると「源泉徴収されてない=税金がかからない」と勘違いしやすいので注意が必要です。
2-3. 支払調書が届かないこともある
直契約のクライアントは、必ずしも「支払調書」を発行してくれるわけではありません。
その場合は**自分の売上記録(請求書控えや入金明細)**を根拠に確定申告する必要があります。
**→ まとめると、直契約は「売上管理や税額計算をすべて自分で行う必要がある」**のが特徴です。
3. 消費税の扱い
直契約とエージェント契約では、消費税の処理にも違いがあります。
- エージェント契約
エージェントが消費税をまとめて処理してくれる場合が多い。こちらには「税込みでいくら」といった形で支払われる。 - 直契約
請求書に自分で消費税額を記載する必要がある(インボイス制度に対応していれば適格請求書として発行)。
特に2023年から始まったインボイス制度の影響で、直契約の場合は適格請求書発行事業者として登録しておかないとクライアント側が仕入税額控除を受けられず、取引に支障が出ることがあります。
4. 経費処理はどちらも同じ
交通費、PC購入費、通信費、書籍代など、業務に必要な経費は直契約でもエージェント契約でも同じように計上できます。
違いは「売上部分の管理方法」だけであり、経費の取り扱い自体は変わりません。
5. どちらが有利か?
エージェント経由のメリット
- 税務処理がシンプル(支払調書が届く)
- 未払いリスクが低い
- 案件を探す手間が省ける
直契約のメリット
- 中間マージンがないため報酬単価が高くなる傾向
- 契約条件を柔軟に交渉できる
- クライアントと直接関係を築ける
税務処理の手間を考えるとエージェントが楽ですが、報酬面を考えると直契約に魅力があります。最終的には「安定を取るか、自由度を取るか」というバランスで判断するのが現実的です。
まとめ
「エージェントと直契約で税務処理はどう違う?」を整理すると:
- エージェント経由
- 源泉徴収あり
- 支払調書が届く
- 確定申告がスムーズ
- 直契約
- 請求書発行が必要
- 源泉徴収なし → 税金は自分で納める
- 支払調書が届かない場合もある
- 消費税(インボイス対応)に注意
どちらもメリット・デメリットがあり、フリーランスとしては両方の仕組みを理解しておくことが大切です。
案件の獲得手段だけでなく、税務処理の違いも踏まえて戦略を立てることが、長く活動するうえでの安心につながります。

