はじめに:フリーランスにとって税理士は必要か?
フリーランスエンジニアとして独立したとき、まず悩むのが「会計や税務を自分でやるか、税理士に頼むか」という問題です。独立初期はお金をかけずに自分でやろうと考える人が多いですが、売上が増えたり事業が複雑になってくると「そろそろ税理士をつけたほうがいいのでは?」と感じる瞬間がやってきます。
私自身、最初は会計ソフトだけで自力申告していましたが、一定の売上を超えた頃から税理士をつけるメリットを実感しました。本記事では、フリーランスエンジニア目線で「税理士をつけるメリット」と「かかるコストの相場」を整理し、判断の参考になるよう解説します。
税理士をつけるメリット
1. 確定申告・決算の負担が大幅に減る
一番のメリットはこれです。
確定申告や法人決算は、会計ソフトを使えばある程度は自力でできますが、以下のような壁にぶつかりがちです。
- 勘定科目の判断に迷う(開発用PCやソフトウェアの扱い、外注費など)
- 消費税の課税区分が分からない(海外サービスやApp Store売上など)
- 減価償却や家事按分の計算が複雑
- 法人化後の決算書や役員報酬の処理が難しい
税理士がいれば、これらの判断を委ねられます。特に、インボイス制度や消費税申告などの新制度にも対応してくれるため、申告漏れや間違いによる追徴課税のリスクを減らせるのは大きな安心材料です。
2. 節税アドバイスがもらえる
税理士は、ただ帳簿をまとめるだけでなく、節税のアドバイスをしてくれる存在です。
- どの経費を計上できるか
- 家事按分の最適化(自宅オフィスの経費割合など)
- 青色申告特別控除の最大化
- 法人化のタイミングやメリット
- 小規模企業共済やiDeCoなどの活用
これらを適切に活用することで、結果的に税理士費用以上の節税効果が出ることもあります。
3. 税務調査への安心感
フリーランスでも税務調査が来ることがあります。税理士がついていれば、調査時の対応を任せられるだけでなく、普段から適切な処理をしていることで調査のリスクを減らせます。
特に法人化した場合、売上規模が大きいと調査の可能性が高まります。税理士が顧問としてついていると、税務署からの信頼度も上がるといわれています。
4. 契約や事業計画の相談相手になる
税理士は会計・税務だけでなく、事業計画や資金繰りの相談にも乗ってくれます。
- 新しいサービスやアプリをリリースしたときの課税関係
- 法人の資金調達や融資のアドバイス
- 契約書の税務上の確認(源泉徴収の要否など)
特にエンジニアは開発に集中しがちで、お金の流れを後回しにしてしまうことがあります。信頼できる税理士がいれば、数字面の戦略をサポートしてもらえるのは大きな安心材料です。
5. 本業に集中できる
最終的に、これが最大の価値かもしれません。
フリーランスの一番のリソースは「時間」です。会計・税務に使う数十時間を開発や営業に使えれば、案件の単価を上げたり、新しいサービスを作ったりして収入を伸ばせます。
「自分で頑張って申告すれば数万円浮く」と思っても、その時間で得られる開発収益やスキルアップの価値を考えると、税理士費用以上のリターンがあるケースは少なくありません。
税理士のコスト相場
税理士費用は事業規模や契約内容によって幅がありますが、フリーランスエンジニアの場合、おおむね以下の範囲が目安です。
| 契約タイプ | 年間費用の目安 | 内容 |
|---|---|---|
| スポット申告(確定申告のみ) | 5〜10万円前後 | 年1回の申告書作成。日常の記帳は自分でやる。 |
| 顧問契約(個人事業主) | 月1〜2万円+決算料10〜20万円 | 記帳サポート、節税相談、確定申告込み。 |
| 顧問契約(法人) | 月2〜5万円+決算料20〜30万円 | 法人決算・消費税申告・給与計算サポート。 |
※顧問契約では、月次の仕訳入力代行や帳簿チェック、決算・申告書作成、節税アドバイスが含まれるのが一般的です。
※IT・エンジニア系に強い税理士事務所だと、クラウド会計ソフトに対応していて費用を抑えやすい傾向があります。
コストを左右する要素
- 売上・経費の件数:取引が多いと入力作業が増えるため費用も上がりやすい。
- 法人か個人か:法人決算のほうが複雑なので高くなる。
- 記帳代行の有無:自分で記帳すれば安くなるが、丸投げすると高くなる。
- 節税・コンサルティングの深さ:単純な申告だけなら安いが、戦略的な節税相談が含まれると高くなる。
税理士をつけるか判断するポイント
1. 売上・利益が増えてきたか
売上が500万円〜700万円を超えるあたりから、所得税の累進課税や消費税対応の難しさが増してきます。
この段階になると、節税メリットだけで税理士費用を回収できることが多くなります。
2. 法人化を検討しているか
法人化すると決算や社会保険の手続きが複雑になり、素人が完全に対応するのはほぼ不可能です。法人化を視野に入れた時点で、早めに税理士を探すのがおすすめです。
3. インボイス制度に対応する必要があるか
インボイス登録をすると消費税の申告が必要になります。免税事業者のときより会計が複雑になるため、このタイミングで税理士をつける人が増えています。
4. 本業に集中したいか
時間の価値はエンジニアにとって非常に大きいです。数十時間の記帳・申告作業を自分でやるより、開発やマーケティングに使ったほうが利益につながると感じるなら、税理士に任せるのは投資といえます。
5. 数字に苦手意識があるか
会計や税務がストレスになっているなら、早めにプロに任せたほうが精神的にも安心です。
数字を気にしすぎて開発に集中できない状態は、フリーランスとしてもったいないです。
税理士の探し方と選び方
- IT業界やフリーランスの実務に強いかどうか
サブスク、海外サービス、ストア売上などを理解している税理士は安心感が違います。 - クラウド会計ソフトに対応しているか
freeeやマネーフォワードを使える税理士だと、データ連携がスムーズでコストを抑えやすいです。 - レスポンスの速さ・コミュニケーションの相性
Slackやチャット対応など、連絡手段やスピード感も重要です。 - 料金体系が明確か
月額・決算料・オプションの内訳を事前に確認しましょう。
無料相談や税理士紹介サービスを利用して比較検討すると、自分に合うパートナーを見つけやすいです。
まとめ:税理士費用は「時間と安心を買うコスト」
- 税理士をつける最大のメリットは、確定申告・決算の負担軽減と節税アドバイス。
- インボイス制度対応や法人化を検討しているなら、早めに依頼したほうが安心。
- 年間コストは個人で5〜20万円、法人で20〜50万円程度が目安。
- 時間の価値や節税効果を考えれば、費用以上のリターンが得られることが多い。
「もう少し売上が増えたら」と先延ばしにする人も多いですが、売上が安定し始めた段階で税理士に相談してみるのがおすすめです。数字の不安から解放され、本業の開発に集中できるだけでも大きな投資効果があります。

