地方創生とフリーランス：自治体案件の可能性

1. 「東京一極集中」から「地方分散型経済」へ

長らく続いてきた東京一極集中の構造が、いま大きく揺らいでいます。
人口減少と過疎化が進む中、地方自治体は「地域経済をどう維持・発展させるか」という課題に直面しています。
その鍵を握るのが、デジタル技術とフリーランス人材の活用です。

特にコロナ禍以降、リモートワークやワーケーションの普及によって、
「どこに住んでいても働ける」社会が現実になりました。
この変化に合わせて、自治体が外部人材を積極的に登用する動きが全国で広がっています。

地方自治体や中小企業では、デジタルマーケティング、アプリ開発、AI導入などの
高度なスキルを持つ人材が圧倒的に不足しています。
しかし、正社員として採用するには予算面で難しい。

そこで登場するのが、期間限定で参画できるフリーランス人材です。
フルタイム雇用ではなく、「必要な時に必要なだけ頼む」仕組みが地方の現実にマッチしています。

総務省や経産省は、都市部の人材が地方の課題解決に関わることを目的に
「関係人口」や「副業・兼業マッチング支援」を推進しています。
具体的には、

地方創生プロジェクトに外部専門家を派遣する「地域プロフェッショナル人材制度」
民間マッチングサイト（例：Skill Shift、Work for、JOB HUB LOCAL など）
といった仕組みが整い、都市と地方をつなぐ動きが加速しています。

以前は「外部の人間に業務を任せるのは不安」と感じる自治体が多かったものの、
成功事例が増えるにつれて認識が変わってきました。
いまや、「外部のプロと協働して地域課題を解決すること」が地方行政のスタンダードになりつつあります。

地方自治体や関連団体が発注するフリーランス案件は、想像以上に多様です。
ここでは実際に見られるジャンルをいくつか紹介します。

観光PRや地域産品の発信において、SNSマーケティングや動画制作の知識を持つフリーランスが求められています。
たとえば「Instagramで町のファンを増やす」「YouTubeで特産品を紹介」など、
地元の魅力を外に発信するクリエイティブ案件が増加中です。

観光サイトや移住定住支援サイト、地域イベントアプリなど、
UI/UXを意識したデジタル整備を進める自治体も多く、
フリーランスのWebエンジニアやデザイナーが部分的に参加しています。

地方では「人口動態の分析」「交通データの可視化」など、
データをもとに政策立案を支援するプロジェクトも増加しています。
AI・統計・GIS（地理情報システム）の知識を持つフリーランスが重宝されています。

庁内システムのクラウド化、RPA（自動化ツール）導入などを支援する技術系案件も増えています。
短期間での導入支援や、職員への操作レクチャーなど、「スポット型支援」として契約されるケースが多いです。

地方創生案件の最大の魅力は、「自分のスキルが地域を変える力になる」こと。
エンジニアやデザイナーが手掛けた仕組みが、
観光客の増加や移住希望者の増加につながる事例も増えています。
スキルの社会貢献というやりがいを得られるのは、他の商業案件にはない特長です。

地方で活動することで、首都圏では出会えない起業家、行政職員、地域プレイヤーとつながることができます。
これがきっかけで、地元企業との長期契約や移住支援につながるケースもあります。

地方案件はリモート対応が多く、また実際に現地滞在を伴う場合も、
交通費・宿泊費が自治体負担になることが多いです。
ワーケーション的に働くスタイルを選ぶ人も増えています。

自治体案件は民間案件と比べると報酬水準は控えめですが、
継続性と安定性が高い点が強みです。