― フリーランスが次に備えるために ―
はじめに
ここ数年、生成AIの進化は目を見張るものがある。
ChatGPTやClaude、Gemini、GitHub Copilot、Midjourneyなど、
AIツールは開発・デザイン・文章作成などあらゆる業務に浸透してきた。
AIは「人の仕事を奪う」と恐れられる一方で、
実際の現場では“奪う”仕事と“生み出す”仕事の両方が確実に存在している。
本記事では、AI導入によって今後減っていく仕事と増えていく仕事を、
具体的な例を交えて整理する。
そして、フリーランスやエンジニアがこの変化の中で
どう動くべきかを考えていきたい。
減っていく案件 ― AIに代替されやすい仕事
AIは「反復」「定型」「再現性の高い」作業を得意とする。
つまり、人間がマニュアルに沿って行っていた仕事の多くは
自動化されていく可能性が高い。
① 定型的なコーディング・修正作業
HTML/CSSのマークアップ、単純な機能追加、
軽微な修正といったルーチン開発系の仕事は真っ先に影響を受ける。
GitHub CopilotやCursorのようなAIエディタを使えば、
仕様書やコメントから自動的にコードが生成され、
単純なUI構築であれば人間の手をほとんど介さずに完了できる。
「とりあえず動くものを作る」だけの案件は、
AIの登場で単価の下落と案件数の減少が進むと見られる。
② SEO記事・量産型ライティング
文章生成AIの進化により、
「○○とは?」「おすすめ5選」などの定型コンテンツは
AIが一瞬で書けるようになった。
すでに多くのメディアでは、人間ライターを減らし、
AI生成+人間校正の体制に移行している。
ただし、読者体験や専門性、感情に訴える文章などは
まだAIには完全に再現できない。
“情報を伝えるだけの記事”は減り、
“体験を語る記事”が残るという構図になるだろう。
③ シンプルな画像制作・バナーデザイン
CanvaやAdobe Firefly、MidjourneyなどのAIデザインツールによって、
単発のバナー制作・SNS画像制作は大幅に自動化された。
「参考画像をもとに少し変えるだけ」のような案件は、
発注側が自らツールを使って完結させるケースが増えている。
デザイナーは単なる“作業者”ではなく、
「ブランディング・アートディレクション」を担う側へと
役割を移す必要がある。
④ 単純データ処理・アノテーション業務
AIによる自動ラベリング、音声文字起こし、画像分類の精度が上がり、
データクレンジングなどの単純処理も
AIが実施できるようになってきた。
単価が低くボリュームで稼ぐ系の案件は、
AIの自動化対象となる可能性が高い。
増えていく案件 ― AIを“活かす側”の仕事
一方、AIを使いこなす人間が関わる案件は
確実に増えている。
ポイントは、「AIを使って効率化する」のではなく、
“AIを活用して新しい価値を生む”ことだ。
① AIツール導入・業務自動化支援
最も増えているのが、企業のAI導入支援案件だ。
- ChatGPTやGemini APIを社内システムに組み込む
- 自動要約・自動返信などのスクリプト開発
- RPA(業務自動化)×AI連携の実装
「どうAIを取り入れれば業務が変わるのか?」を提案し、
技術的に実装できる人材は重宝されている。
特にPython・JavaScript・Google Apps Script(GAS)あたりのスキルを持つ人は、
AI導入プロジェクトに引っ張りだこだ。
② AIを使ったアプリ・SaaS開発
生成AIを活用した新規サービス開発も急増している。
例としては、
- ChatGPT連携のチャットサポートツール
- 音声認識+要約アプリ
- AI画像生成を使ったデザイン支援SaaS
- LLMを活用した学習・教育系アプリ
これらの開発には、
API連携やプロンプト設計、AI出力のチューニングなど
AI特有の知見が必要になる。
単純なフロント実装よりも、
「AIをどう組み込むか」の設計が重要になるため、
開発者のスキル価値はむしろ高まっている。
③ データ整備・品質管理・AI監修
AIの精度を上げるためには、
「正確なデータ」「人間による検証」が欠かせない。
そのため、AIが生成した出力をチェック・改善する
監修・ファクトチェック業務の需要が急増している。
- AI生成テキストの誤情報チェック
- 画像生成AIの出力品質管理
- モデル出力の評価・微調整(フィードバックループ)
これは、AIに“人間の感性”を教える仕事でもあり、
今後は「AIの先生」という新しい職種として定着していくかもしれない。
④ AI活用の教育・研修・コンサルティング
企業だけでなく、個人や教育機関もAIツール導入を急いでいる。
しかし、現場で「どう使えば成果につながるか」を理解している人はまだ少ない。
そのため、AI活用のセミナー講師・社内研修・教材制作など、
教育系のAI案件も増加傾向にある。
実務経験を持つエンジニアが、
AIを“実際にどう使っているか”を教える立場になることで、
高単価なコンサルティング案件へとつながる。
⑤ AIを組み合わせた「創造的」な仕事
AIの普及で、むしろ人間の創造力が問われる仕事が増えている。
たとえば、
- ストーリー設計+AI生成による動画制作
- ゲーム開発でのAIキャラクター生成
- アート・音楽・広告コピーなどの共創プロジェクト
AIが「素材」を作り、人間が「意味」を与える。
その境界に新しい職種が生まれている。
“AIを使って何を作るか”を発想できる人こそ、
これからの主役になる。
フリーランスが備えるべき3つの視点
AI導入で案件構造が変わる中、
フリーランスが取るべき行動は明確だ。
① AIを「使う側」から「設計する側」へ
AIツールを使えるだけでは差別化にならない。
「どんな課題に、どのAIをどう使うか」を設計できる力が重要。
つまり、ツールユーザーではなくプロダクト思考の実践者になること。
AI API・プロンプト設計・UX設計の知見は、
今後の標準スキルになる。
② 複数スキルを掛け合わせる
AIは単一スキルを代替するが、
スキルの掛け合わせは依然として強い。
- AI × Webアプリ
- AI × 医療・教育・金融
- AI × デザイン・マーケティング
ドメイン知識を持つエンジニアほど、
「AIをどう活かすか」の設計でリードできる。
③ “AIでは代替できない領域”を磨く
最後に残るのは、人間的な判断・感性・倫理だ。
クライアントとの信頼関係、
問題の本質を見抜く洞察力、
チームを導くコミュニケーション能力。
AI時代でも変わらない価値は、
「誰と働きたいか」で決まる。
まとめ:AIは“仕事を奪う”のではなく“形を変える”
AI導入によって、確かに一部の案件は減っていく。
しかし、それと同時にAIを扱える人材の需要は
これまで以上に拡大している。
AIは敵ではなく、
私たちの“拡張ツール”だ。
単純作業を手放し、創造的な仕事に集中できる時代。
AIをどう扱うかが、フリーランスの収入と自由を決める。
これからのキーワードは、
「AIに使われる人」ではなく、「AIを使いこなす人」になること。
その意識を持てる人こそ、次の波に乗れる。

