フリーランスエンジニアとして独立すると、会社員時代のように「給料天引き」「会社負担」「福利厚生」がなくなります。
つまり、お金の管理・防衛をすべて自分でやる必要があるということ。
売上を上げるスキルと同じくらい、
「お金を守るスキル」もフリーランスには不可欠です。
この記事では、特に独立1〜3年目のフリーランスが押さえておきたい
貯金・投資・保険の基本戦略を解説します。
■ まず大前提:フリーランスは「収入が安定しない職業」
フリーランスの最大の特徴は「収入の波がある」ことです。
案件が多い月は潤っても、閑散期や契約切れの月には一気にゼロになることもあります。
したがって、まず意識すべきは「守りの仕組みづくり」。
① 貯金で生活防衛
② 投資で長期安定
③ 保険でリスク回避
この3つのバランスを取ることが重要です。
■ 1. 貯金編:最低3〜6か月分の「生活防衛資金」を確保せよ
◎ 生活防衛資金とは
仕事がなくなっても生活を維持できる資金のこと。
理想は生活費の6か月分、最低でも3か月分。
例えば、月の生活費が25万円なら、
最低75万円〜150万円は「絶対に手を付けない口座」に置いておきましょう。
◎ 貯金の優先順位
- 税金・保険料の積立(確定申告後に慌てないため)
- 緊急資金(病気・機材トラブルなど)
- 生活防衛資金(無収入期間に備える)
フリーランスにとって「現金=安心」。
この土台を作らないまま投資に走るのは危険です。
◎ 管理のコツ
- 生活費・事業費・税金の口座を分ける
- 売上が入ったら「税金用」「生活用」「自由資金」に即仕分け
- freee や MoneyForward などの自動連携ツールを使うと管理が楽
■ 2. 投資編:「守り」から「育てる」へ
貯金が一定額を超えたら、次は資産を「育てる」段階です。
とはいえ、フリーランスにとって最優先は“安定”なので、
ギャンブル的な投資ではなく「長期・分散・積立」が原則です。
◎ 基本方針:国が推奨する制度を活用する
最初に使うべきは、NISA(新NISA)とiDeCoです。
● NISA(少額投資非課税制度)
- 年間投資額の上限内で得た利益が非課税
- つみたて投資枠と成長投資枠を組み合わせ可能
- まずは「つみたてNISA」からスタートがおすすめ
● iDeCo(個人型確定拠出年金)
- 掛金が全額所得控除になる=節税効果が大きい
- 原則60歳まで引き出せない代わりに、老後資金として強力
- 国民年金基金と組み合わせも可能
◎ 投資対象の目安
- 積立NISA:インデックスファンド(例:S&P500、全世界株式など)
- iDeCo:バランス型 or 債券比率高めのファンド
あくまで「時間を味方にする投資」。
短期で利益を狙わず、毎月自動積立・10年以上運用を意識しましょう。
■ 3. 保険編:会社員時代より“自衛”が必要
フリーランスは、会社の社会保険制度に守られていません。
万一の病気・事故・労働不能に備えるために、最低限の保険は準備しておきましょう。
◎ 必須レベルの保険
(1)国民健康保険
病気・ケガの医療費の基本となる公的保険。
ただし、傷病手当金がないため「働けない間の収入補填」はなし。
(2)国民年金+付加年金 or 国民年金基金
老後資金対策として必ず加入。
特にフリーランスは会社負担がないため、上乗せ制度の利用が重要です。
(3)所得補償保険(就業不能保険)
病気やケガで働けなくなったときの収入補償。
保険会社によって補償期間・免責期間が違うため、独立後は必ず検討しましょう。
(4)損害賠償保険(業務ミス対策)
クライアントのデータ損失や納期遅延で損害賠償を求められた場合に備える保険。
特に開発系フリーランスは加入しておくと安心です。
■ 4. 税金・将来資金も「積立化」でラクに管理
貯金・投資・保険を整理しても、フリーランスにとって最大の落とし穴は「税金の支払い忘れ」です。
確定申告後に「こんなにかかるの!?」となるのを防ぐため、
毎月の売上から以下を自動で積み立てる仕組みを作りましょう。
| 積立項目 | 目安割合 |
|---|---|
| 所得税・住民税 | 売上の15〜20% |
| 国民年金・健康保険 | 売上の10% |
| 生活防衛資金 | 売上の10% |
| 投資(NISA等) | 余剰資金の範囲で |
税金・年金・保険を“固定コスト化”しておくと、
精神的なストレスも大幅に軽減されます。
■ 5. 心構え:「攻めの稼ぎ」より「守りの継続」
独立初期は「もっと稼ぐ」「単価を上げる」に意識が集中しがちですが、
長く続けるために本当に大切なのは「守りの体力」です。
- 貯金がある人 → 心に余裕ができて判断が冷静
- 投資を続けている人 → 将来の安心感が生まれる
- 保険で備えている人 → 予期せぬトラブルにも動じない
これらはすべて、安定して働き続けるための基盤です。
■ まとめ:フリーランスの「お金の3本柱」
| 項目 | 目的 | 目安 |
|---|---|---|
| 貯金 | 生活防衛・緊急資金 | 3〜6か月分の生活費 |
| 投資 | 将来の資産形成 | つみたてNISA・iDeCo中心 |
| 保険 | リスク対策 | 医療+所得補償+賠償保険 |
フリーランスは「収入の自由」と引き換えに、「自己責任の重さ」を背負います。
だからこそ、貯金・投資・保険を“自分で設計する力”が武器になるのです。
稼ぐ力は“攻めのスキル”。
守る力は“継続のスキル”。
両方を磨くことで、真に自由なフリーランス人生が始まります。

