フリーランスエンジニアの人口は、2020年代に入って急増しました。
副業解禁・リモート普及・クラウドソーシングの拡大などが追い風となり、
個人で働くことが「特別」ではなくなっています。
しかし、今後5年のフリーランス市場は急成長期から淘汰期へと入ります。
エージェント業界も例外ではなく、
勢いで参入した企業の多くが撤退・統合・買収されていく流れが見え始めています。
この記事では、
・なぜ淘汰が起こるのか
・どのタイプのエージェントが生き残るのか
・エンジニアはどう備えるべきか
をわかりやすく整理します。
1. 市場は「拡大」から「精選」フェーズへ
コロナ禍以降、リモート案件の増加に伴って、
フリーランスエージェントは乱立状態にありました。
ここ数年で参入した新興企業の多くは、
「案件紹介+マージン」という同じビジネスモデルをコピーして急成長。
しかし、2025年以降の市場は横ばいまたは緩やかな縮小に向かうと見られています。
背景には次の3つの要因があります。
- 企業側のリモート人材活用が成熟し、新規需要が減る
- エンジニアの供給が過多になり、単価競争が起きる
- AI・自動化によって、必要人員そのものが減る
成長期には「紹介できる人がいれば儲かる」状態でしたが、
これからは質と信頼を持つエージェントしか生き残れない時代になります。
2. 淘汰されるエージェントの特徴
5年以内に消える可能性が高いのは、次のようなタイプです。
・マージンを隠して透明性がない
・担当者の入れ替わりが激しい
・案件数だけを売りにしている
・フォロー体制やキャリア支援が弱い
・AIや自動マッチングに対応していない
エンジニア側の意識が上がり、
「ただ案件を紹介するだけの仲介業」は価値を失っていきます。
代わりに求められるのは、
**“パートナーとしてキャリアを支援できるエージェント”**です。
マッチングだけでなく、スキルアップや交渉代行、
メンタル面のフォローまで含めた総合的サポートが重要になります。
3. 生き残るエージェントの3タイプ
今後5年で再編の中心になるのは、次の3つのタイプです。
1. 直請け・高単価特化型
エンジニアに高還元できる構造を持つエージェント。
マージンを10〜15%程度に抑え、企業と直接取引することで単価を上げています。
レバテック、ギークスジョブのような大手直請け勢が引き続き優位。
2. リモート・副業ハイブリッド型
週3やリモート案件を中心に扱い、
柔軟な働き方を支援するモデル。
ITプロパートナーズ、クラウドテックなどがこの領域で強く、
地方在住や兼業型フリーランスの拡大に対応しています。
3. AIマッチング・データ駆動型
AIによる自動推薦、スキル分析、報酬シミュレーションなどを組み合わせた新興勢力。
「人の感覚」から「データとAI」による最適化へと移行中です。
既存の大手もAI化に舵を切っており、ここが最大の再編ポイントになるでしょう。
4. 再編と買収が進む理由
エージェント業界では今後、M&Aが加速します。
大手が中小エージェントを買収し、顧客基盤・データベース・担当者ネットワークを統合していく流れです。
背景にあるのは、顧客獲得コストの高騰。
広告・イベント・SNS運用などで新規エンジニアを獲得するコストが上がり続け、
個人で集客する中小エージェントが立ち行かなくなっています。
一方で、登録エンジニア側も「信頼できる大手でまとめて登録したい」と考える傾向が強まり、
結果的に大手集中と中小淘汰が進んでいく構図です。
5. エンジニアに求められる3つの戦略
淘汰が進む市場で、フリーランス側も「選ばれる立場」から
「選ぶ側」へ意識を変える必要があります。
1. 複数エージェントを比較・併用する
一社依存は危険です。
エージェントが撤退・担当交代した瞬間に案件が止まるリスクがあります。
常に2〜3社と関係を維持し、相場感とネットワークを広げておくこと。
2. 実績をデータ化・発信する
AIマッチング時代には、スキルや成果が数値で可視化されます。
ポートフォリオやスキルシートを「成果ベース」で定期更新し、
検索・推薦アルゴリズムに拾われやすくすることが重要です。
「Pythonで開発」ではなく
「Pythonで予測モデル構築し、誤差を20%削減」といった具体的成果が武器になります。
3. エージェントを“使う”立場になる
エージェントに依存するのではなく、
「自分の営業代行」として上手に活用する姿勢を持ちましょう。
担当者を信頼しつつも、案件の最終判断は常に自分軸で。
情報をもらう、交渉を代行してもらう、相場を知る──
このように主導権を握ると、どの再編にも対応できます。
6. 今後の市場構造予測(2025〜2030年)
・エージェント数は今より3割減少
・AIマッチングを導入した大手がシェアの7割を占有
・地方・リモート・副業案件は引き続き増加
・マージン透明化が義務化または標準化
・登録エンジニアは“スコア化”され、実績が自動で可視化される
つまり、実績と信頼をデータで証明できる人だけが高単価を維持できる時代になります。
単なるスキルアピールではなく、「成果+信頼+発信」が必須条件です。
7. エンジニアが今から準備すべきこと
- スキルシートを成果ベースに更新する(AI検索に対応)
- ポートフォリオをクラウド上に整理(いつでも共有可能に)
- 主要エージェント2〜3社と長期的関係を構築
- 収入をエージェント依存から脱却し、副業・自社開発も視野に
- AIツールの導入と自動化スキルを積極的に身につける
「AIを使えるエンジニア」と「AIに代替されるエンジニア」の差は、
今後5年で決定的になります。
8. まとめ:変化の波に乗る者が“選ばれる側”になる
これからの5年で、フリーランス市場とエージェント構造は大きく再編されます。
淘汰は避けられませんが、同時にチャンスでもあります。
・透明性と支援力を持つエージェントが生き残る
・AIによる自動マッチングが主流になる
・成果を見せられるエンジニアが選ばれる
そして何より大切なのは、
「市場が変わっても自分の価値を証明できる仕組みを持つ」ことです。
フリーランスにとっての武器は、スキルではなく信頼。
信頼は、一度築けばどんな再編の波にも負けません。
AIとともに働く時代を、主体的にデザインできる人こそが、
次の5年を勝ち抜く本当のプロフェッショナルです。

